“一手一つの感動”世代を超え受け継がれ – 企画リポート 鼓笛活動70年
2024・8/7号を見る
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本教の鼓笛活動は今年、70年の節目を迎えた。昭和29年の活動開始以来、国内はもとより世界各地で鼓笛隊が結成され、現在では400を超える団体が活動し、道の次代を担うようぼくの育成に大きな役割を果たしている。この企画では、長年にわたり鼓笛活動を続けている日本橋団鼓笛隊と髙安団玉造鼓笛隊を取材し、鼓笛活動の意義やその魅力に迫る。
次代に信仰を伝えて
日本橋団鼓笛隊
7月27日午前9時、日本橋団鼓笛隊は午後に控える「鼓笛オンパレード」の出演に向けて練習に励んでいた。
同隊責任者の坂本篤郎さん(25歳・東川島分教会長後継者)は「子供たちは『鼓笛オンパレード』で金賞を取って、『鼓笛お供演奏』に単独出演しようと一生懸命に練習してきた。スタッフも、その願いを叶えさせようと必死に努めている」と話す
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同隊の結成は昭和30年。当初は40人ほど隊員が集まったが、次第に活動が停滞するようになった。
こうしたなか、昭和56年、中臺春滿・日本橋団育成会長(当時)の発案で「日本橋団鼓笛隊千名編成推進部」が発足。鼓笛活動を通じて縦の伝道を推し進め、大教会を挙げて鼓笛活動に積極的に取り組んだ。
現在の練習は、日帰りと合宿形式で月3日実施。隊員には普段から感謝の心や物を大切にすることを伝えるとともに、合宿では鳴物の練習と近隣の駅周辺でのごみ拾いを続けている。
スタッフの一人、籾山晶子さん(49歳・日之濱分教会ようぼく)は、40年以上鼓笛隊に携わり、6人の子供も参加させてきた。「鼓笛隊に参加したおかげで、子供たちは幼いころから教えに親しむことができた。今の私たち家族があるのは鼓笛隊のおかげ。本当にありがたい」と語る。
コロナ下も工夫を凝らし
午後1時30分ごろ、日本橋詰所で最終調整。細かいリズムなどを確認した後、スタッフが用意したサプライズ動画が流された。動画には、これまでの練習の様子などが収められていた。
コロナ下で約1年間の活動中止を余儀なくされたが、スタッフが話し合って工夫を凝らし、自宅でできる個人練習の解説動画を毎月制作して配信した。集まっての練習を再開してからも、隊員たちは自宅で個人練習を継続。その様子を撮影した動画を共有し、皆で意識を高めてきたという。
迎えた本番。隊員たちは、猛暑を吹き飛ばすような、はつらつとした演奏・演技を披露した。
「日本橋団鼓笛隊、ゴールド、金賞!」
手を合わせて結果発表を待っていた隊員たちは一斉に歓声を上げ、仲間たちと喜びを分かち合った。さらに、バトン・ポンポンは「優秀演技賞」を受賞。そして、その日の金賞団体のうち5団体に与えられる「鼓笛お供演奏」の単独出演選出も果たした。
隊員の一人、中学3年生の小林優月さんは「単独出演は、私にとって最初で最後の機会だったので、みんなと出演できてとてもうれしい。鼓笛は私の人生に無くてはならないもの。少年会員を終えても、スタッフとして関わっていきたい」と笑顔を見せた。
夕方に行われた「鼓笛お供演奏」でも、隊員たちが喜び心いっぱいに演奏・演技を行った。
坂本さんは「1年間の集大成として『鼓笛お供演奏』に参加することができて、ありがたかった。鼓笛活動の本分は、信仰を子供たちに伝えていくことにある。歴代の先輩たちの思いを受け継ぎ、私も次代を担う子供たちに信仰を伝えられるよう力を注いでいきたい」と話した。
文=島村久生
道の子弟育成をめざし
髙安団玉造鼓笛隊
27日午後7時、「鼓笛お供演奏」に臨む各地の鼓笛隊員が東礼拝場前で整列する。創立65年を迎えた髙安団玉造鼓笛隊の隊員たちは、真剣な面持ちでこどもおぢばがえりソング『ありがとう! 夏のおぢば』を響かせた。
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昭和34年、野々村寛・玉造分教会前会長の発案で、道の子弟育成を目標に結成された同隊。なかでも力を入れたのが、おつとめを勤められる人材の育成だ。毎月の練習では、開始前に必ず全員でおつとめを勤めるほか、合宿練習では隊員たちが鳴物を勤める機会も設けている。現在では、講社祭の際に隊員が鳴物を勤めるようぼく家庭も少なくない。
同隊責任者の野々村成朗さん(43歳・玉造分教会長後継者)は「世代を超えてつながりを持てることが、教会にとって大変有り難いことだと感じている」と鼓笛隊の魅力について語る。
家族5人全員がスタッフ
コロナ下で活動を一時休止せざるを得なかったが、2021年に「鼓笛お供演奏」が親里で実施されることを受けて練習再開。活動休止の間に、隊員数はやや少なくなったものの、スタッフ一丸となって活動を継続してきた。
27日の「鼓笛お供演奏」で隊旗を高らかに掲げていたのは、玉造隊育成委員長を務める不破聡さん(56歳・玉造分教会教人)。「鼓笛隊の発足時に中心となって活動した父の影響で、幼少から鼓笛隊に参加してきた」という不破さんは、少年会員を終えて以来40年以上にわたり“鼓笛隊ひと筋”で通ってきた。いまでは家族5人全員がスタッフを務めているという。
妻の百合さん(55歳・同ようぼく)は30年前、当時婚約中だった不破さんに誘われて初めて教会を訪れた日に、鼓笛隊の活動を目にした。「子供たちの笑顔と、スタッフの方々の温かさにふれたことで、お道の教えをすんなりと受け入れ、信仰の道に入ることができた」と振り返る。
また、長女の瑞喜さん(28歳・同)は「先輩やスタッフの全員が『あいさつ』や『感謝 慎み たすけあい』の生き方の大切さを教えてくださった。そのおかげで、私自身も日常生活で自然と実践できるようになった」と話す。
「鼓笛お供演奏」終了後、不破さんは「隊員たちは、これまでの練習の成果を存分に発揮してくれたと思う」と誇らしそう。「私の娘たちは17歳になったら自ら別席を運び、ようぼくの仲間入りを果たした。子供に信仰が伝わる有り難さを感じる一方で、信仰の喜びは一朝一夕に味わえるものではないからこそ、鼓笛隊の活動を続けていく重要性を強く認識している。これからも先輩から受け継いできた大切なものを、道の未来を担う子供たちに伝えていきたい」
翌28日、同隊は「鼓笛オンパレード」に出演。1年間の集大成を披露し、5年ぶりの「金賞」に輝いた。
野々村さんは「おぢばで過ごした二日間、隊員たちが互いにたすけ合う姿を数多く見られたことが何よりうれしい。鼓笛の演奏や練習を通じて、お道の精神を伝えることを軸に、これからも末永く鼓笛活動を続けていきたい」と語った。
文=久保加津真