時報俳壇(2024年9月4日号) – ふじもとよしこ選
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下駄履いて橋のたもとへ川開
東京都 吉田柳哲
甚平やポーカーフェイスの世の憂い
横浜市 番家達也
青空を擽るごとし合歓の花
今治市 仙波絹子
甘露台へそそぐ金色夏至のぢば
天理市 北 をさむ
毎日が梅干のある朝餉かな
名古屋市 伊園三郎
母の日に母になる子に花贈る
千葉県 樋渡 忍
つとめ衣の真新しきや風薫る
北九州市 岩谷典子
ひのきしん出来る幸せ能登薄暑
札幌市 田森つとむ
ほたるの灯とび交う布留の川辺みち
吹田市 楓 芳雄
一本の竿に託すや初鰹
福岡市 山口騰水
朱夏のぢば高く湧かせる子等の声
豊川市 菊地美智代
炎昼に子供率いてぢば帰り
東京都 長嶋郁代
鼓笛隊子等のふせこみぢばの夏
宇治市 原 清彦
雨粒にスイッチ入るかたつむり
愛媛県 中山富貴
更衣昨年の若さ取り戻す
名張市 霧道三明
ドローンの農薬散布夏の畑
二戸市 高屋敷節子
喜雨来たり登殿の朝父想う
東京都 大矢典子
花樗の咲けば想ひぬ姉のこと
佐賀県 武市艶子
想い出の神殿掃除明け易し
堺市 加藤恵秋
夏空に見あぐ球児の放物線
高崎市 正田久美代
花柄の杖夏雲を追いかける
滝川市 家納千世子
初夏の風石狩平野一直線
旭川市 藤崎 実
夏布団部屋に敷きつめ子等を待つ
観音寺市 川上隆子
夏至の庭ピザ焼く孫の得意顔
江別市 杉山忠和
新築の庭に一本青楓
北九州市 松下澄子
猛暑日も瞳を輝かすぢば集い
東京都 廣瀬智恵
じじばばも子供おぢばで麦茶かな
東京都 長嶋眞一
選者詠
月涼し湾に漂ふ舫ひ船
【評】
吉田さん――季語の「川開」は隅田川の両国橋のほとりで大花火を打ち上げる行事。下駄、浴衣、団扇……と想像が広がります。
番家さん――無表情を装う若者の多い現代社会を嘆く作者。「甚平」を着た容姿に言い得て妙です。
仙波さん――「合歓の花」の紅色の雄蕊が、頬紅の刷毛のように美しく、「擽るごと」く風に揺れています。
次回は、10月末までの到着分から選句。投稿は秋の季語(8、9、10月)を用いた俳句3句まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
〒632‐8686 天理郵便局私書箱30号「時報歌壇」係
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