仲間と信仰を語り合い豊かな人間性を育んで – 天理大学創立100周年特別インタビュー 永尾比奈夫学長
2024・9/18号を見る
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2025年の創立100周年へ「つながる」をコンセプトに
2025年4月、天理大学は創立100周年を迎える。1925(大正14)年に設置された天理外国語学校を前身として、「『陽気ぐらし』世界建設に寄与する人材の養成」を使命に歩みを進めてきた同大。現在、「CONNECT『つながる』を、始めよう。」をコンセプトに、記念事業を展開している。ここでは、永尾比奈夫学長に、創立100周年に向けた取り組みや、親里で学生生活を送る魅力などを聞いた。
六つの“つながり”を構築
――建学の精神に込められた思いを、あらためてお聞かせください。
天理大学は大正14年、天理外国語学校として始まりました。中山正善・二代真柱様が、世界たすけに寄与する海外布教師の養成を主眼に創設されました。
現在は総合大学となり、「『陽気ぐらし』世界建設に寄与する人材の養成」を建学の精神に据えています。この精神を身につけるには、私利私欲のために人生を謳歌するのではなく、いかに自らの心を澄まし、人さまの役に立てるかという視点が重要です。こうした他者への献身の精神を「天理スピリット」と呼び、これを体現する人間性の涵養に努めています。
――創立100周年記念事業のコンセプトは、どのようなものですか。
「CONNECT『つながる』を、始めよう。」がメーンメッセージです(コラム参照)。建学の精神に沿った教育を加速させるため、六つの接点を構築し、学生の“気づきと成長”を促したいと考えています。
たとえば「学部学科がつながる」では、昨年「医療学部」が誕生し、今年度から4学部15学科制のもと、新たなスタートを切りました。各学部学科がつながって総合的な教育を施し、より広い視野を持って教養を身につけることができる環境を整えています。
また、「社会や地域とつながる」では、地域行政との包括連携のもと、地域に根ざした実践的なプロジェクトを実施しています。
――具体的な取り組みは。
記念事業の一つとして、天理駅前のコフフン施設、南団体待合所、「i CONNECT Shop」の3施設をサテライトキャンパスと位置づけました。ここでは、天理市の観光と農業に貢献する人材の育成を目指した特別講義を行っています。
また、農業生産法人「天理アグリ株式会社」の経営に参画したり、株式会社モンベルと「天理大学・モンベル共同体」を結成したりと、地域やビジネスとのつながりの創出も進んでいます。これらの取り組みは、学生が企画・運営に積極的に携わることで社会との接点を持ち、さまざまな“気づきと成長”を得るための新たな学びの場として整えたものです。
私は、この六つの接点は、そのまま“にをいがけの接点”になると思います。学生時代にこうしたつながりを構築することで、卒業後もさまざまなつながりを持ちながら“お道のにをい”を伝えていけるのではないでしょうか。
親里ならではの学生生活
――お道の若者が天理大学で学ぶ魅力について、教えてください。
六つの接点の中央に、「知の探求」を掲げています。大学の本丸は教育・研究ですが、この「知」には、人知を超えた親神様・教祖の思召の探求も含まれると考えています。信仰者として求道の道を歩み、信仰の喜びを人さまに伝えていくことが「知の探求」の根底にあります。学生たちには学術的な知識に加え、お道らしい人間性を身につけてもらいたいですね。
また、「宗教性」「国際性」「貢献性」を人間教育の柱としています。なかでも「宗教性」の涵養については、宗教学科の学科会である「成人会」、信仰サークル「よふぼく会」などの学生活動に加え、「信仰フォーラム」「おつとめまなび」といった信仰行事を通じて多くの学生の宗教性を育んできました。
社会へ出てから道につながるためには、学生時代に信仰を同じくする友人が周囲にいることが重要なポイントになると思います。高校とは違い、大学は学び方や生活をある程度、自ら自由に決めることができます。当然、社会人になれば、さらに自由度が増す。そのときに大事なのは、普段から教会につながり、物事を信仰的に考えることができるかどうかです。
自由を謳歌できる環境にいながら、試行錯誤を繰り返して自分なりの信仰を培っていく。世界に大学多しといえど、これができるのは天理大学しかありません。
――学生たちは、どんな〟気づき〟を得るのでしょう。
先日、ある学生から次のような話を聞きました。
普段は時間があるときだけ、時折、本部神殿で参拝していた。そんななか、同じクラブに所属する友人がけがをして、大会出場が危ぶまれた。「俺のためにお祈りしてくれないか」と頼まれ、いったんは躊躇したが、彼の頑張りを間近に見ていたので、真剣におさづけを取り次いだ。そして、この経験をきっかけに、その後も神殿へ足を運ぶようになったそうです。
また別の学生は、問題を抱えて悶々と日々を送るなか、未信者の友人に悩みを打ち明けた。すると、「いつも話している神殿で参拝したらどうか。一人で行きにくいなら一緒に行くから」と言われた。こうして一緒に参拝したことが、心が切り替わる転機になったということです。
同じ信仰を持つ仲間はもちろんですが、信仰を持たない友人との関わりを通じても、豊かな人間性を育むことができる。そんな天理ならではの魅力があると思います。
信仰心を培う教育環境
――信仰心を培うために、どのようなサポートを心がけていますか。
2018年から「宗教主事」という役職を設置しています。海外の宗教性を帯びた大学は、宗教主事やスピリチュアルカウンセラーを必ず置いています。本学にも天理教の信仰を持つ学生が3割ほど在籍しているので、信仰的な支援体制の一つとして置くことにしました。
近年、心を病む学生が少なくありません。本学はスクールカウンセラーと心理相談室を有していますが、信仰的な悩みを抱える学生にとって、宗教主事なら安心して相談できると考え、信仰的な支援体制があることを周知しています。
さらに、新たな取り組みとして「宗教主事サロン」を設けました。信仰を持って社会で活躍する卒業生を招き、話をしてもらうというものです。信仰のある先輩が在学中にどんなことを考え、どのようにお道とつながりを強めていったのか。あるいは、普段どのように教会につながっているのか。こうした話を聞くことで、卒業後も、お道の信仰を胸に自分と向き合うことができると思います。
――最後に、創立100周年を経て、“次の100年”へ向かう展望をお聞かせください。
天理大学には天理図書館、天理参考館があり、学術的に恵まれた環境で学ぶことができます。また、おぢばに近く、同じ信仰を持つ仲間と語らうこともできる。100周年を吉祥に、学術的にも信仰的にも、豊かな学びが得られる環境を整えていきたいと考えています。
特に、本学を卒業した教内関係者の方々には、自信を持って子供に天理大学への進学を勧めていただきたい。自分たちがいま、お道を通っている理由の少なからずは、学生時代の4年間、親里で信仰的な経験をしたからではないでしょうか。この100周年の旬に、ぜひとも多くの方々に、おぢばで学び、信仰を培う経験を味わっていただきたいと願っています。
コラム
六つのCONNECT
“気づきと成長”をもたらす「つながり」の接点
創立100周年事業のコンセプトは「CONNECT『つながる』を、始めよう。」。学生に“気づきと成長”をもたらす六つのつながり「学生同士がつながる」「学部学科がつながる」「卒業生とつながる」「社会や地域とつながる」「ビジネスとつながる」「世界とつながる」の場を想定している。
天理大学創立100周年特設サイトはこちら
https://www.tenri-u.ac.jp/100th/