「たすけて」と言えない若者への寄り添い方は – ひのきしんスクールシンポジウム
2024・10/23号を見る
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ひのきしんスクール(橋本武長運営委員長)はこのほど、シンポジウム「『たすけて』と言えない若者たち――薬にハマる理由と背景」をオンラインで開催した。
このシンポジウムは、生きるのがつらいと感じる若者が人に助けを求めることができず、薬物に依存する傾向が指摘されるなか、麻薬や覚醒剤に限らず、違法ではない市販薬の過剰服薬、いわゆるオーバードーズ(OD)が社会問題になっていることを受け、若者の心理や背景を探るとともに、寄り添い方を模索するもの。
感情的ではなく医療的に
橋本委員長によるあいさつの後、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の薬物依存研究部部長および同センター病院薬物依存症センター長の松本俊彦氏が「自傷と市販薬ODの理解と援助」と題して基調講演を行った。
松本氏は冒頭、10代の若者のうち10~20㌫が自傷行為をする現状にふれたうえで、若者の悩みに言及。悩みを周囲の人に相談できない状況にあり、一人で抱えきれない怒りや不安、悲しみなどの不快な感情を軽減するために自傷に及んでいる、と解説した。
続いて、10代でリストカットの経験が一度でもある人の死亡リスクが、そうでない人と比べて400~700倍に跳ね上がると示したうえで、リストカットとODが合併することで自殺行動のリスクが高まると指摘。覚醒剤原料が含まれる市販薬の乱用により、酩酊し、衝動性にブレーキがかかりにくくなることで自殺行動に移りやすくなるとして、ODの危険性について詳しく説明した。
この後、若者からリストカットやODの経験を打ち明けられた際の心構えについて話を進めた。
その中で、「Respond Medically not emotionally(感情的にではなく、医療的に反応を)」という言葉を紹介。叱ったり驚いたりするのではなく、冷静に「来てくれてありがとう」と受け入れる態度が大切と話した。
最後に松本氏は、若者が安心して話せる場所を学校や家庭、地域につくっていくことが支援につながると述べて、講演を締めくくった。
このほか、シンポジウムでは、保護司を務める松本恵子氏(須佐分教会長夫人)、公認心理師の東井申雄氏(本部准員)、司会の宇田まゆみ氏(ひのきしんスクール運営委員)の3氏によるパネルディスカッションが行われた。
その中で、東井氏は「悩みを抱える若者は、アドバイスが欲しいのではなく、本音で語り合えるような関わり方を求めている。”コミュニケーションの糸口”を見つけ、同じ目線で話をすることが大切」と述べた。
また、松本恵子氏は「私たちは悩みを抱える本人や家族を変えることはできないが、教祖のひながたを学び、寄り添いながら、徳積みや心の掃除ができるように導いていきたい。信仰者として、教えを胸に若者と関わっていくことが重要だ」と語った。