馬 地震 能登の未来――本に込めた思いを語り合う – 石川県立図書館で出版記念トークショー
2024・10/23号を見る
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道友社は5日、JRA(日本中央競馬会)で長く調教師を務め、”競馬界のレジェンド”と称された角居勝彦氏(60歳・鹿島大教会大輪布教所教人)の”セカンドライフ”に密着取材したドキュメンタリー『馬をたすけ 人をたすけ』(片山恭一著)の出版記念トークショーを金沢市の「石川県立図書館だんだん広場」で実施した。角居氏と著者の片山氏が、「令和6年能登半島地震」の被災地である金沢で、馬・地震・能登の未来について対談。会場には多くの市民が駆けつけた。
本書は、角居氏が調教師を退いた後、お道の布教師として人々に寄り添いつつ、奥能登で引退競走馬の支援や「ホースセラピー」の普及促進に取り組む姿を精力的に取材し、書き下ろしたもの。
4月の刊行以来、教内外で好評を博している同書は、角居氏が代表理事を務める一般財団法人「ホースコミュニティ」が、「馬に携わる人たちが馬に感謝する日」として開催する「サンクスホースデイズ」でも一般販売。14日に東京競馬場で実施された「デイズ」では、多くの競馬ファンが同書を買い求めた。
道友社では「能登の未来について語られる本書を通じて、まずは被災地の人に元気を届けたい」との思いのもと、石川県でのトークショー開催を検討してきた。その中で、2年前のオープン以来、ローマの古代遺跡「コロッセオ」をイメージさせる円形書架が話題になり、県外からも多くの観光客が訪れる「石川県立図書館」に企画を持ちかけたところ、趣旨に賛同。館内施設の「だんだん広場」で実施することになった。
ホースセラピーの意義
「馬をたすけ 人をたすけ そして地域をたすけ」と題するトークショーには、市民ら95人が訪れた。
冒頭、両氏が地震を乗り越えて本書の出版までに至った経緯を振り返ったうえで、話題は角居氏が精力的に取り組んでいる「ホースセラピー」(動物療法の一つ)へ。日本では、海外と比べてセラピーが認知されていない現状にふれたうえで、ある子供が馬と触れ合う中で次第に表情が和らぎ、自信を取り戻す姿を目の当たりにした話を紹介するなど、セラピーの意義について語り合った。
角居氏は「お世話する人は『この馬に何をすればいいか』ということを想像する。すると、人間に対しても、どんなことをすれば喜んでもらえるのかと考えるように変わっていく」「こうしたことを、ここ能登で始められればと模索している」と話した。
この後、角居氏と片山氏は、地震で多くの人々が離れた能登の未来や、競走馬の安楽死の問題などにふれて、トークショーを終えた。
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終了後、会場ではサイン会が催され、来場者が長い列をつくった。また、『馬をたすけ 人をたすけ』の現地販売も行われ、多くの来場者が手に取った。
石川県立図書館・経営管理課の宮原佑介さんは「石川県で暮らす人々は、『地震や大雨の被害に遭った能登のために私たちにできることは何か』と考える機会が多いと思う。そうしたなか、この課題に真正面から取り組む角居さんの話を聞くことで、参加者の皆さんは思考を深めることができただろう。被災地の未来につながる、とても良いイベントになったと思う」と話した。