電車で泣き叫ぶ男の子 – 陽のあたる方へ7
2024・11/13号を見る
【AI音声対象記事】
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朝、ある親子が満員電車に乗り込んできました。小学4年生くらいの男の子が「学校へ行きたくない!」と大声で泣き叫んでいます。あまりに大きな声なので、周囲の乗客も困惑気味です。お母さんが「静かにして。どうして行きたくないの?」と尋ねると、「面白くないから」と。さらに「なぜ面白くないのか?」とお母さんが聞くと、「分からない。面白くないと思うから」と言っていました。親子は、どうにかこうにか目的の駅に着き、降りていきました。
私どもの「こども食堂」でも不登校やひきこもりの子が少なくありません。理由はさまざまで、お母さん方から個別に話を聞くと、「クラスに馴染めない」「面白くない」という場合もありますが、「突然行かなくなった」「理由が思い当たらない」という方もしばしばおられます。筆者の娘が不登校だったこともあり、当時の反省も含めて少しでも参考になればと、相談に乗っています。ですが、事情は人それぞれ。こうするとうまくいく、というようなものがあるわけではありません。
とはいえ、子供が学校へ行かないと決心すること自体、相当な精神的エネルギーを消耗するはずなので、まずは家庭が「心落ち着く居場所」となるように心がけることをお勧めしています。そして、落ち着いてきたら、第2段階として、「こども食堂」などの家庭外での「心の居場所」、楽しいと思える場所を、子供自身が見つけられるように、共に探していくという作業を促しています。
ここで必要なことは、親が「子供が変わる」か「学校などの環境を変える」、あるいはその両方を、といった思案を重ねることです。ひきこもりの原因を取り除かない限り、問題は解決しません。
「おふでさき」に「だん/\と心しづめてしやんする すんだる水とかハりくるぞや」(二号26)とあります。
子供の心のもやが晴れ、視界が広がったと感じるようになるには時間がかかります。行ったり来たり、試行錯誤の日々ではありますが、親は大きな心で温かく子供に接するとともに、親自身も、変わる必要がある機会だと受けとめることが大切なのではないでしょうか。
乾 直樹(京都大学大学院特定教授・大阪分教会正純布教所長後継者)