「雅楽の学び場」10年 “平安ブーム”に花添え 教会長が塾長を務める「京都雅楽塾」- 話題を追って
2024・11/27号を見る
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『源氏物語』誕生にまつわる人間模様を描いたNHK大河ドラマ「光る君へ」が人気を博し、全国各地で関連イベントなどが催されている。こうしたなか、今年3月にNHKBSプレミアムで放送された「光る君へ」の特別番組「生中継 古都の春『光る君へ 千年の桜』」に、藤村正則さん(59歳・近山分教会長)が塾長を務める「京都雅楽塾」が出演。また今月には、同塾の開設10周年を記念し、「『源氏物語』のうたまい」と題した雅楽公演を京都府立文化芸術会館で開催した。“平安ブーム”に花を添える教内の雅楽活動の話題を追った。
「京都雅楽塾」は、一般の人を対象とする「雅楽の学び場」。天理高校と天理大学の雅楽部出身の藤村さんが、教祖130年祭へ向かう三年千日活動の期間中、自分にできる活動を模索するなか、教会で茶道教室を開くなど日本文化の伝承に取り組む井上嘉朗さん(63歳・眞榮分教会前会長)の協力を得て10年前に開設したもの。
「敷居を低く、格調を高く」をモットーに活動する同塾。5年前には兵庫県丹波市にも塾を開設し、現在は未就学児から70代の高齢者まで100人以上が入塾している。
藤村さんは「雅楽に親しんでもらうことはもちろんだが、人との調和を重んじる『陽気ぐらし』のエッセンスを伝えることを大切にしている」と語る。
開設初期から同塾に通う未信仰の千野元治さん(65歳)は「講師の皆さんが分かりやすく指導してくださるので、楽しんで学ぶことができる。また、仲間との稽古を通じて相手を尊重し、助け合う大切さに気づけるなど、技術のみならず心の成長にもつながっている」と話す。
記念公演に400人来場
2024年3月、同塾はNHK大河ドラマ「光る君へ」の特別番組「生中継 古都の春『光る君へ 千年の桜』」に生出演した。
番組では、塾長の藤村さんが、本作の主人公である紫式部を演じる吉高由里子さんに鳳笙を、龍笛の名手としても名高い藤原公任を演じる町田啓太さんに鞨鼓を、それぞれレクチャーした。この後、『源氏物語』に描かれる京都・大覚寺で、同塾メンバーが舞楽『陵王』を披露した。
また、11月2日には同塾の開設10周年を記念し、初の雅楽公演「『源氏物語』のうたまい」を京都府立文化芸術会館で開催。約400人の聴衆が来場するなか、佐藤浩司・天理大名誉教授の著書『雅楽「源氏物語」のうたまい』(道友社)をモチーフに、紫式部が『源氏物語』の中で描いた雅楽のシーンを、舞楽『萬歳楽』や謡物『更衣』など五つの演目で表現。同塾のメンバーの雅やかな演奏・演技に、会場からは万雷の拍手が湧き起こった。
公演前後には、『雅楽「源氏物語」のうたまい』の販売ブースが設けられ、同書を買い求める来場者が列を成した。
藤村さんは「『われわれの仲間になりたいと思ってもらえるような演奏を』との思いで本番に臨むなか、終了後には多くの人たちから京都雅楽塾についての問い合わせを受け、うれしさと感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。この演奏会を一つの節目として、これからも活動の輪をさらに広げ、雅楽を通じて陽気ぐらしの教えが伝わるように努めていきたい」と話した。
文=久保加津真
写真=嶋﨑良