すべての食べ物は親神様からのお与え – 陽のあたる方へ 10
2025・3/5号を見る
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国連世界食糧計画(国連WFP)は2024年6月、世界的な飢餓は、食料不足によるものではなく、毎年生産される食料の約5分の1が消費されることなく失われていることに一つの原因がある、とのメッセージを発表しました。食品ロスの約60%は家庭で発生しており、豊かな国では調理した食べ物を残したり、冷蔵庫やキッチンの戸棚の中に放置して腐らせたりすることで、一方、途上国では貯蔵設備が不十分なため、害虫やカビが蔓延することで起きている、とのことです。
また、食品ロスが世界経済に与える総コストは約1兆米ドル(約160兆円)と推定され、なおかつ食品ロスによる地球温暖化ガスの排出量は、世界全体の約10%を占めていると報告しています。
筆者自身、学生時代にはアフリカに粉ミルクを送る活動に参加したり、社会人になってからは国連WFPのボランティア活動に参加したりして、飢餓の問題に向き合ってきました。いまは国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の中にある「2030年までに世界全体で一人あたりの食品廃棄量を半減させる」との目標の達成に向けて、自分にできる範囲で活動しています。
教祖は「菜の葉一枚でも、粗末にせぬように」(『稿本天理教教祖伝逸話篇』112「一に愛想」)と教えられました。これは節約が美徳ということではなく、万物は親神様のご守護で与えられるものであり、それらを無駄にせずありがたく頂戴することが大切という教えです。また、教祖は「食べる時には、おいしい、おいしいと言うてやっておくれ」(同132「おいしいと言うて」)とも言われました。動物や植物に対して、「まずい」などと文句を並べていては、親神様の思いには沿えません。すべては親神様からのお与えですから、「ありがたい」と感謝して頂きたいものです。
食べ物の恵みを通じて、親神様のご守護を日々味わわせてもらう。これは天理教を信仰する者の大きな喜びの一つです。その喜びを感じることに加え、世界の人々に分け隔てなく食べ物がいきわたるように、少しでも食品ロスの削減を心がけたいと思います。
乾 直樹(京都大学大学院特定教授・大阪分教会正純布教所長後継者)