もしかしてスマホ依存? – Well being 日々の暮らしを彩る 6
2025・4/30号を見る
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電車やバスに乗るとつくづく思う。「皆スマホだな」と。電車の七人掛けの席は、スマホを手にして凝視する姿が並ぶ。
そういう私もスマホを手にすることが多くなっている。パソコンに来る仕事メールに出先から返信するため買ったのが、しだいにいろいろなことをスマホでするように。宅配便の受取指定やジムのレッスン予約など。
用が済んだらすぐにしまえばいいけれど、画面脇に出るスポーツシューズの広告に「そういえば前に検索した。その後価格はどうなったか」とついチェック。気になるニュースをまたチェック。
大リーグに少々興味のある私は、東京で開幕試合が行われたとき、選手のインスタグラムを知らず知らずのうち頻繁に見ていたらしい。ラーメンやテーマパークを楽しむようすを「意外とあちこち出没しているのだな」と眺めていて、我に返った。選手の好きな日本の食べ物とか家族と遊んだ場所とかに、私は詳しすぎないか?知る必要の全然ないことなのに。
オンラインゲームと無縁、音楽や動画の視聴をスマホではしない、SNSもせず「自撮り」の仕方すら知らない私は、ヘビーユーザーではないつもり。それでもスマホをさわるのが習慣になりつつある?
どれくらいが危険域かがわかるかと調べていたら、使いすぎを防ぐアプリがいろいろあって、私のスマホにもすでに入っているとわかった。一日の利用時間の合計と、何に使ったのかの割合が円グラフで示されるらしい。
スマホ依存の対策がスマホ頼みなのは抵抗感をおぼえるが、意地を張らずに使ってみよう。
翌日、電車の中で仕事メールの返信文を作成していると、画面上に「十五分」と表示され驚いた。一日の最後に利用時間を表示するだけでなく、一定時間使い続けると、つど「警告」を発するらしい。
それにしてももう十五分? そんなに複雑なメールではない。日程の候補をいくつか挙げるメール一本を作成するだけで十五分とは。アプリの計測違いを疑ったが、到着した駅からして、確かにそれくらい経過している。
私にとってはスマホを使う正当な理由である用をなすだけでこうだと、他の骨休め的な時間はどれくらいになるのか。
果たして、午後の降水確率のチェックから目に留まったニュースと関連情報を検索するうち、また「十五分」の表示。ちょっとのつもりが、そんなにのめり込んでいたとは。ヘビーユーザーでないつもりだったのが、私もひたすらスマホを凝視し続ける人になっていた。
依存対策アプリは私の真の姿を映し出す鏡である。
岸本葉子・エッセイスト