“人に尽くす喜び”身につけて – 密着ルポ わかぎおぢばひのきしん
2025・8/13号を見る
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仲間と共に成長した一日
親里各所に設置されたお茶所で帰参者にお茶を振る舞う“わかぎ”たちの笑顔が輝く――。中学生層の少年会員(わかぎ)を対象とした“ひのきしん一日体験コース”である「わかぎおぢばひのきしん」が今年も実施された。昭和63年にスタートした「わかぎ――」は、おぢばでのひのきしんを通じて、仲間づくりとたすけ合いを実践するとともに、“人に尽くす喜び”に気づき、信仰の一歩を踏み出す“出発点”にもなってきた。夏のおぢばでのひのきしんを通じて、中学生たちは何を学び得たのか――。今年参加したわかぎたちの一日に天理時報記者が密着し、その成長の軌跡を追った。
7月29日午前7時半、おやさとやかた東左第5棟の受付に、次々と参加者が集まってきた。
「じゃあ私たちはここまで。今日一日頑張ってね」。不安そうな表情を見せる中学生を、引率者が優しく励ましながら送り出した。
この日集まったわかぎたちは43人。お揃いの青いTシャツと帽子を着用した後、少年会本部委員の増井真孝・「わかぎ――」主任から「『喜ばさずには一人もかえされん』という教祖のお心が、おぢばに帰ってきた人に伝わるように、元気いっぱいひのきしんに励んでもらいたい」と激励を受けた。
続いて、2班4グループに分かれ、共にひのきしんに取り組むメンバーと顔合わせ。緊張するわかぎたちの間に、どこかぎこちない雰囲気が漂う。
新しい仲間と共に過ごす親里の一日が、どのようなものになるのか。記者は、ひのきしん現場へ向かう1班Aグループを追った。
周りに目を向け自発的に
列の先頭で現場へ誘導するのは、班の世話役を務めるカウンセラーたち。今回初めてカウンセラーとして参加した平田克さん(天理大学1年・鍜冶平分教会ようぼく)は、「自分自身も初めて『わかぎおぢばひのきしん』に参加したときは緊張した。皆が少しでも早く打ち解けられるよう、できる限りサポートしたい」と意気込む。
8時半、一行はひのきしん現場である本部神殿南礼拝場前のお茶所に到着。そこは、すでに冷たいお茶を求める多くの帰参者でにぎわい、テント内では、お茶を汲む人、コップを回収する人、洗う人、コップを所定の場所に配る人など役割ごとに協力して作業が進められていた。
大忙しな現場に加わり、ひのきしんを始めたわかぎたち。気温は36度。暑さと緊張からか、指示がないとその場に立ち尽くしてしまう子も。額に汗をにじませながら、うつむきぎみにコップを運んでいた的場樹里さん(中学2年・京都府向日市)は「朝から暑くて、動き回るのが大変で、ひのきしんにあまり気持ちが入らない」とぽつりともらす。
ひのきしん開始から30分、数人ずつが交代して休憩へ。この間、平田さんは自己紹介や雑談などでコミュニケーションを取りながら、わかぎ同士の交流のきっかけをつくっていく。すると、少しずつ緊張がほぐれてきたわかぎたちに笑顔が見え始めた。
10時、「バラエティー188」の受付付近のお茶所へ現場変更。仲間同士での会話が増えるにつれて、わかぎたちの表情や声色も明るくなってきた。やがて、帰参者の姿を見つけると自発的に呼びかけるなど、行動にも変化が。仲間と打ち解けたことで周りに目を向け、「帰参者に喜んでもらおう」とひのきしんに励むようになっていた。
感謝の言葉をかけられ
午後は、東泉水プール前広場のお茶所へ。大勢の子供たちが「お茶ください!」と詰めかけるなか、わかぎたちは懸命にひのきしんに励む。
「お茶を渡した相手から感謝の言葉をかけられると、不思議と心が温かくなり、気づけばひのきしんが楽しくなっていた」と話す的場さんは、午前中とは打って変わって、晴れやかな表情を見せる。
ひのきしん終了時刻の4時、「もっとひのきしんがしたい」とつぶやいていたのは、吉村颯君(中学1年・京都市)。「みんなと協力してひのきしんができて、とても楽しかった。お茶を飲みに来た人が笑顔になるのを見て、人のために動くのもいいなと思った」とはにかむ。
片付けの後、お楽しみ行事が行われ、解隊式。今日一日を無事に過ごせたことに安堵の表情を見せた平田さんは、「引っ込み思案の子も多かったが、自分の殻を破って、人に喜んでもらおうと行動してくれたことが何よりうれしかった。勇んでひのきしんに励む姿勢に、私も普段の通り方を見つめ直したいと思った」と感慨深げに話す。
帰り際、的場さんは「家に戻ってからも、『ありがとう』の言葉を意識して通りたい」と。吉村君は「来年も絶対に参加する!」と満面の笑顔で語った。
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夏のおぢばで“人のために尽くす喜び”を身につけたわかぎたち。仲間と共に大きく成長した一日の思い出を胸に、未来を担うようぼくへの一歩を踏み出した。
文=久保加津真