日本選手権で初優勝天理大学4人目の快挙 – 天理大学陸上競技部 寺本 葵選手
2025・8/27号を見る
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天理大学陸上競技部の寺本葵選手(4年)は、7月4日から東京・国立競技場で開かれた「日本陸上競技選手権大会」に初出場。女子400メートルで初優勝を果たした。天理大生の日本選手権優勝は、個人種目では4人目の快挙となった。
小学4年生で陸上を始めた。6年時には「全国小学校陸上競技交流大会」女子100メートルで4位入賞し、女子100メートルの兵庫県記録を残した。中学でも全国大会に出場するなど活躍したが、高校時代はけがに苦しみ、結果を残せずに終わった。
その後、体育教師を目指して天理大へ。体力に自信があることから、400メートルを専門種目とした。
山本大輔監督(40歳)は寺本選手について、「脚の回転がスムーズで、疲れが出始める中盤から終盤にかけてもピッチが落ちにくく、最後までしっかり走りきる走力がある。何より、明るく真面目で、一つひとつのことを大切にしながら取り組むことができる選手だ」と印象を語る。
2年時に新型コロナウイルスに感染。後遺症で足に痛みが残り、試合出場はもとより走ることすらできない時期が長く続いた。それでも諦めずに練習に励み、走る代わりに自転車を漕ぐなど工夫しながらトレーニングを重ねてきた。
迎えた最終学年。それまでの「ペース配分を考えた走り方」から「最初からしっかりスピードを出す走り方」に切り替えて臨んだ4月の大会で、自己ベストを大幅更新。この勢いのまま、同月の「2025日本学生陸上競技個人選手権大会」女子400メートルで初優勝を手にした。
決勝で自己ベストを更新
初挑戦となる日本選手権に向けては、山本監督と相談しながら練習メニューを調整。新たに“背中を使った走り”をイメージした練習に取り組むとともに、広背筋や僧帽筋の強化に努めてきた。
同大会には、昨年の覇者である松本奈菜子選手(東邦銀行所属)をはじめ、今春に日本記録を上回る51秒71を記録し、6月に日本国籍を取得した青木アリエ選手(日本体育大学3年)などの“トップ層”がエントリー。初日の予選を自己ベストを更新する53秒30で1位突破した寺本選手は、「とても緊張するけれど、いつも通り走ろう」と決勝戦に臨んだ。
レース後に「無心で走った」と振り返る通り、寺本選手は序盤から全力疾走。スパートをかけた終盤に次々と走者を追い抜き、トップを走っていた中尾柚希選手(園田学園大学3年)と横一線に。最後まで諦めずに走り抜けた寺本選手は53秒14で自己ベストをさらに更新し、2位と0秒06の僅差で優勝をつかみ取った。
寺本選手は「けがなどでつらい時期が多かったこともあり、これまでたくさんの人に迷惑をかけてきた。今大会の優勝が、そうした人たちへの恩返しになったのではないか。これまで陸上競技を続けてきて本当に良かったと思う。秋にもまだ大会が控えているので、次こそは夢の52秒台を目指したい。一方で、結果だけにとらわれずに、自分が楽しいと思える走りを追求したい」と笑顔を見せた。
山本監督は「競技スポーツは努力が必ず報われる世界ではない。そうした中で、さまざまな苦労を乗り越え、恩返しができたと喜ぶ彼女の姿を見ると、選手を預かる指導者としても、このたびの快挙をとてもうれしく思う」と話している。