新研究が迫る人類進化の謎 – 視点
「我々はどこから来たのか我々は何者か我々はどこへ行くのか」。フランスの画家、ポール・ゴーギャンの代表作のタイトルだ。この人類永遠の根源的問いに、一つの手がかりを与える画期的な発見・研究がある。
2022年のノーベル生理学・医学賞は、「古ゲノム学」という新分野を確立したスバンテ・ペーボ教授に授与された。およそ4万年前に絶滅したネアンデルタール人の古代の骨から抽出したDNAの解析・再構成に成功し、現生人類ホモ・サピエンスと絶滅した古代人類の関係や、人類進化の謎の一部を突きとめたことなどが受賞理由とされる。
その成果の一つに、同時代に共存した第三の古代人類、デニソワ人の発見も含まれている。私たちの祖先は、かつて欧州にいたネアンデルタール人や、アジア・オセアニアへ進出したデニソワ人とそれぞれ生活圏を共にし、交配し、両者の遺伝子の一部は現代人に受け継がれていると明らかにした。そして日本人も例に漏れず、両者由来の遺伝子を持つ人が少なくないことも、ペーボ教授は指摘している。
さらに驚くことに、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクの高低に、ネアンデルタール人由来の遺伝子群が関係していることも判明、世界に衝撃を与えた。日本人の場合、コロナの“重症化遺伝子”はほとんど持っておらず、逆に“予防遺伝子”を約3割が持っているという。古代人類の免疫システムが現代人に少なからず影響していることを、今回のパンデミックは図らずも証明するかたちとなった。
こうした新たな発見と研究成果は、人類の進化に対する理解の枠組みを大きく変えようとしている。
ところで、お道の教えでは進化という用語は使われないが、主に「心の成人」という文脈で人間としての成長や成熟を説く。その目指すところは「陽気ぐらし」である。それは元初まりに、親神様が人間を創めかけられた思召であり、子供である人間が親の護りと導きを受け、末代かけて歩む究極の目標である。先のゴーギャンのひそみに倣うならば、「我々は陽気ぐらしをするために創造され、親神様の子供として、陽気ぐらしを目指して心の成人の歩みを進めていく」と言えようか。
その元の親が、教祖に入り込まれ、この世の表に初めて顕現された「立教の日」が近づく。あらためて、さらなる心の成人を期し、陽気ぐらしに向かう“仕切りの誓い”を新たにしたい。
(松本)