人的環境の一員として動く – 人と関わる知恵
金山元春
天理大学教授・本部直属淀分教会淀高知布教所長
「障害者・障害児」という言葉があります。「障害」とは個人に帰属されるもの(個人が「障害」を持っている)と捉えられがちですが、現在の国際的な共通認識では、「障害」とは「個人と環境との相互作用」の結果として生じるものと捉えられています。つまり、ある特性を持つ個人が、ある環境で生活しているとき、その生活に相当な制限を受ける状態が継続している場合、その「状況」を指して「障害」と呼んでいるのです。
こうした認識からは、「障害状況」を軽減させるには、周囲の環境を変える必要があるという発想が生まれます。ここでいう環境には、物理的環境だけでなく、人的環境も含まれます。人的環境とは、簡単に言えば人間関係のことです。さらに言うと、物理的環境も、人と人との関わりによって大きく変化します。
たとえば、「似た文字の区別が難しい」という特性から授業に参加することが困難な子供がいるとします。その子が授業に参加できるように、教室の物理的環境(適切な教材・教具)や人的環境(互いを認め合う関係)を整備するためには、その子の特性を理解して支える人が必要です。そのような人がいれば、授業参加が困難であるという「障害状況」は軽減するでしょう。逆に、その子の特性を理解せず、「怠けている」と捉えて、「何度も言っているだろう! どうして分からないんだ!」などと叱責する人がいれば、「障害状況」は拡大してしまいます。
これは「問題」の捉え方に関しても同様です。そこに「問題児」がいるのではなく、「問題状況」が生じているのだと理解しましょう。特に、このエッセーのテーマである「カウンセリング」や「心理学」への関心が強い人は、物事の原因を個人の内面によって説明しがちであり、ともすれば他者に変化を強いる恐れがあります。
「障害」や「問題」があるとされる状況では、周囲の環境に目を配り、自分も人的環境の一員であると認識して動くことが大切です。その状況を好転させるために自分ができることを考え、少しずつでも実行へと移していきましょう。