第14回「社会福祉大会」講演ダイジェスト
誰かに助けられたら ほかの人を助ける社会に
布教部社会福祉課(村田幸喜課長)は4月25日、第14回「社会福祉大会」を陽気ホールで開催した。新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、参加者を制限し、同課所管の連盟、委員会、研究室のメンバーらを対象とするライブ配信形式で行われた。講演では、大阪府子ども家庭サポーターの辻由起子氏が、「若者の育成と支援――コロナ社会における若者の現状と課題」と題して登壇した。その内容をダイジェストで紹介する。
高校卒業後に結婚し、19歳で出産。両親とは疎遠で、夫から日常的に暴力を受けるなか、家計を支えるために身重で働いた。仕事、家事、育児に追われ、いつしか育児ノイローゼに。「幸せになるために頑張ってきたはずなのに、幸せになれないのはなぜ?」と思い悩んだ。
それを知るために大学へ通い、育児不安について学んだ。離婚後、正社員として勤めたが、子育ての時間や体力の余裕がなくなったことで、子供が孤独を感じたのか、心を病んでいった。
すでに個人で解決できる問題ではないことに気づいた。再び大学で学んだ後、これから先の子育て世代が自分と同じように苦しまずに済む環境をつくろうと、子育て支援を始めた。
コロナ禍の中での子育て
現在、子育てに悩む人の相談を年間1,000件ほど受けている。
その中には、子育て以前に根本的な生活の仕方が分からず、暮らしの土台がないゆえに、子育てできないというケースが少なくない。
かつては、一人の子供に一家総出で世話をした。しかし近ごろは、さまざまな理由から一人親家庭が増えている。さらに、コロナ禍で外出や面会が制限されるため、出産後に子供の抱き方さえも分からないまま退院するなど、子育てを学ぶ機会が著しく失われている現状がある。
また、若い女性の中には、悩みを相談したくても適切な窓口が分からず、公的支援を受けられない人が少なからずいる。頼れる人が身近にいないためSNSを利用し、気づかないうちに犯罪に巻き込まれる事例も出てきている。
“受援力”育む環境づくり
こうした困難な状況に陥らないために、自ら助けを求め、適切に差し伸べられた助けの手を、しっかりと握ることができる“受援力”を育む環境をつくることが必要だと考えている。
人には誰かの支えが必要だ。さまざまな人とつながり合うことで、幸せは広がっていく。できないことがあれば、できる人に頼り、困っている人がいたら、自分の得意なことで手助けをして、補い合って生きていくことが本来の社会だと思う。
私自身が実際に支援するときは、わが家で相談者と一緒に生活する。まずは、おしゃべりに興じることから始める。徐々に本音を聞き、できることを探して、一緒にやってみることを大事にしている。
このような活動を行う中で、時折「お礼がしたい」との申し出を受けることがある。そのときは「その時間や費用にあなたの優しさを乗せて、ほかの困っている誰かに渡してください」と伝えている。その人の行いが社会の未来を少し明るくし、その積み重ねが、きっと未来の若者を救うことになると信じている。
[つじ・ゆきこ]
1973年、大阪府生まれ。佛教大学文学部教育学科幼児教育専攻と同社会学部社会福祉学科社会福祉士専攻を修了。子育て支援活動に携わり、「NPO法人ママふぁん関西」副理事、「NPO法人北大阪ダイバーシティ」副理事、子育て応援団体「子どもを守る目@関西」代表などを務める。