「ひのきしんスクール」オンライン講座 – 精神疾患の基礎知識を学ぶ
「ひのきしんスクール」(村田幸喜運営委員長)は、6月26日午後から27日にかけて、オンライン講座「地域でのくらしを支えるおたすけ―――統合失調症、うつ病、躁うつ病」を開催、22人が受講した。
精神疾患を有する患者数は、2017年には4,000,000人に上るなど、近年大幅に増加している。
同講座は、精神疾患の代表的な病である統合失調症やうつ病、躁うつ病の症状や当事者への接し方について学び、精神疾患の理解を深めようというもの。
初日の講義では、精神科医の林竜也氏(林こころのクリニック院長)と、ひのきしんスクール運営委員の林久郎氏(洲北分教会長)が登壇。林竜也氏は「統合失調症」「うつ病」「躁うつ病」の特性や治療法について、林久郎氏は「地域包括ケアシステム」の仕組みについて、具体的なエピソードを交えながら説明した。
2日目は、小瀬古伸幸氏(精神科認定看護師)が「家族や周囲の方の接し方――お互いが楽になるための方法」と題して、現場での実体験をもとに、家族や周囲の人たちが、精神疾患を抱える患者にアプローチするうえでのポイントについて詳しく解説した
■小瀬古氏の講演要旨
普段の何げない会話の積み重ねを大切に
患者の心の仕組みをダムに例える「心のダム理論」がある。ダムの水はストレス、堤防はストレス耐性を示す。水が溢れてしまうと、精神疾患が再発するといわれる。その対策として、大きく三つの方法がある。症状を和らげ、堤防を高める役割を持つ「薬」、ダムの水を逃がす「ストレス発散」、そしてダムに水が入らないようにする「環境調整」だ。
「環境調整」には、患者のメンタル面のケアのほか、家族や周囲の人たちが当事者に接するうえで工夫できる点がある。ゆっくりと話す、話題をシンプルにする、相手の話を遮ってアドバイスしない――などだ。
その中で、互いの心が楽になるために、特に心がけてほしいことがある。それは、家族が当事者に要望を伝える際に、「私」を主語にする「アイメッセージ」と呼ばれる方法を用いることだ。「〇〇してくれると私はうれしい」などと、相手への命令ではなく、自分の気持ちを表現することで、相手も要望を受け入れやすくなる。一方で「あなたは〇〇しなさい」といった、相手を主語にする「ユーメッセージ」は、相手の反発を招く恐れがある。
このほか、当事者が暴言暴力に及んだり、医療機関への受診や入院を拒んだりした際にも、「アイメッセージ」を用いることで、状況が改善することもある。
当事者の精神状態や双方の関係性がすぐに良くなるような“魔法の言葉”はない。普段の何げない会話の積み重ねが大切なのだ。