人に寄り添って ヒューマンストーリー – 大阪の星野めぐみさん
盲導犬になる子犬を育てて
日本では現在、盲導犬を希望する視覚障害者の数に対して、盲導犬の実働数が不足している状況にある(末尾参照)。その理由の一つとして、飼育に関わるボランティアの数が少なく、計画的な繁殖と育成が困難であることが挙げられる。こうしたなか、盲導犬の候補として選ばれた子犬(パピー)を、生後2カ月から約10カ月間、家族の一員として預かる「パピーウォーカー」と呼ばれるボランティア活動に、精力的に取り組む一人の教友がいる。
大阪市の星野めぐみさん(65歳・髙譽分教会ようぼく)は、信仰2代目。普段は市内にある小学校の学力向上支援スタッフとして、担任教師の補佐や児童の学習支援などに当たっている。
パピーウォーカーになるきっかけは十数年前、あるテレビ番組で放送されていた盲導犬の特集を見たこと。盲導犬の頭の良さや、視覚障害者の目の代わりをする姿に興味を持ったという。また、当時飼っていた愛犬が同じラブラドルレトリバーだったことから、盲導犬に関する具体的な取り組みを調べるようになった。
その後、愛犬を亡くした星野さんは、「これから新しいペットを飼うよりも、16年間犬を飼っていた経験を生かして、何か人さまのためにできることはないかと考えた」という。
パピーの“社会化”めざし
現在9頭目の子犬を預かっている星野さん。「パピーは盲導犬になるまでの間に、たくさんのボランティアの手で育てられる。どんな状況でも落ち着いて行動できるように育つために、この時期には、さまざまな経験を積ませることが大事」と話す。パピーの“社会化”を目指して、散歩時には、あえて雨天や人混みの中を歩くこともある。
「返事はなくとも、犬にも言葉は通じている。普段から一つひとつの動作に対して、応援の言葉や褒め言葉を積極的にかけるようにしている」
出歩く際は、盲導犬候補生であることを示すパピーコートを着せるため、時には通行人から「あなたみたいな人がいるおかげで助かる人がいるのだと思います。これからも頑張ってください」などと、励ましの言葉をかけられることもあるという。
また毎年12月には、市内の小学校で、盲導犬の仕事内容やパピーウォーカーの取り組みについて講演している。
星野さんは「ボランティアを続ける中で、視覚障害者の方から感謝の言葉を頂くことも少なくない。それが頑張る原動力になっている。日本では、まだまだ盲導犬の数が足りていない。これからも一人でも多くの方に、パピーウォーカーの活動を知ってもらえるよう努めていきたい」と語った。
コラム – 盲導犬の不足
現在、国の障害者認定を受けた視覚障害者は約31万人。そのうち、盲導犬の希望者は約3,000人と推定されている(公益財団法人「日本盲導犬協会」ホームページ)。一方、社会福祉法人「日本盲人社会福祉施設協議会」の報告によれば、2021年の盲導犬の実働数は861頭だという。希望者に貸与する盲導犬の数が圧倒的に不足しており、頭数確保に向けた対策が急がれる。