すべては基本が肝心 – 視点
大相撲で史上最多の優勝45回を誇る第69代横綱白鵬(36歳=本名・白鵬翔、モンゴル出身、宮城野部屋)が現役引退を発表した。15歳で宮城野部屋に入門し、通算の勝ち星は1,187勝、優勝45回、横綱在位は約14年にわたる84場所。いずれも史上最多を記録した大横綱が、ついに土俵を去ることになった。
その引退会見で「若い世代へのメッセージやエールは」との質問に答えた。
「基本を大事にして、まずは型をつくって、その型ができたときに型を破る、まさに『型をもって、型にこだわらない』。これができれば、必ず強くなっていくんじゃないかなと思います。相撲人生の中で、たくさんの技を持っている人はひとつも怖くなかったです。型を持っている人が怖かったです」
天性の身体の柔らかさに、厳しい稽古による力強さや卓越した技を兼ね備えた白鵬だからこそ、相撲道の神髄を「基本」「型」をもって言い表したように思える。
芸事や武道の練習を稽古というが、これには「古(いにしえ)を稽(かんがえる)」との意味がある。古いものの完璧性を前提にした価値観であり、昔の名人や達人を手本に、一歩でも近づく努力が技芸を進化させるという。
すべては基本が肝心である。建築も土台が弱ければ崩れる。日本舞踊の井上流では、書体の基本である楷書を身に付けてから行書や草書を習得することになぞらえ、稽古に大切な心得として「楷書の如く」という言葉を使う。難しい技法をもって演じるのは、きちんとした基本があってこそとの戒めである。西洋伝統のバレエも、基本的な型を組み合わせて振り付けをしていく。その型は何百年も練りに練り上げられたもの。まず、それを身に付けたうえで創作工夫を加えていく。
翻って、親神様のご守護の世界を思う。教祖のひながたを辿り、歴代真柱様のお導きを胸に、先人の道に倣い、教えに基づく生き方を心がける。それは陽気ぐらしへ続く道である。いかなる時代にも忘れてはならない基本である。
(加藤)