天理時報2023年1月18日号8面
【18年ぶりベスト4 強固な守備で奮闘 – 天理高ラグビー部】準決勝の報徳学園高戦でトライを挙げる天理高ラグビー部(1月5日、東大阪市の花園ラグビー場で)天理高校ラグビー部は、昨年12月27日から東大阪市の花園ラグビー場を会場に行われた「全国高校ラグビー大会」に4年ぶり64回目の出場。準決勝で報徳学園高校(兵庫)に12‐26で敗れたが、強固な守備で奮闘し、18年ぶりとなるベスト4入りの好成績を残した。チームの中心選手である太安善明主将(3年)は、選手とスタッフによる投票で、満場一致でキャプテンに選出。プレーはもとより、「一人だけ大人がいる」と評されるほどの責任感の強さでチームを引っ張ってきた。また昨年4月、「ジャパンラグビーリーグワン」でプレーした経験を持つ同部OBの王子拓也教諭(27歳)が新たにコーチに加わった。今季、チーム改革を図る中で「選手主導」を掲げた松隈孝照監督(50歳)。王子コーチの助言をもとに、主将とチームリーダーたちが練習メニューを考え、試合中の判断力や修正力を向上させてきた。逆転で接戦制し準決勝へ元日の3回戦で、天理高は石見智翠館高校(島根)と対戦。先制を許したものの、前半終了間際に同点に追いつく。その後は守備の時間が続くなか、後半23分に天理高がトライを挙げ、15‐8で勝利した。続く長崎北陽台高校との準々決勝でも先制トライを許したが、前半26分にペナルティーゴールを決め、3‐5と追い上げる。後半12分、相手陣地でのラックから右へ展開し、最後は1年生WTBの内田旬選手が値千金の逆転トライ。その後のロスタイムに、相手校の17度にも及ぶ猛攻をしのぎ、8‐5で勝ちきった。準決勝で戦う報徳学園高は、高い攻撃力を有する優勝候補の一角。序盤から天理高フォワード陣が持ち前の粘り強さで相手の攻撃を止めていく。しかし、16分と前半終了間際にトライを許し、0‐12で折り返す。選手たちは「フォワード陣が積極的にボールを取りにいこう。焦らず自信をもって、ミスを全員でフォローしよう」と声をかけ合い、後半戦へ臨んだ。後半11分、ゴール前7メートルラインアウトからモールをつくってゴール前まで押し込むと、松沢和輝選手(3年)が待望のトライを決め、7‐12と追い上げる。しかし、その後は相手の猛攻に押され、点差を離されていく。ロスタイムに執念のトライを挙げるも、追い上げ及ばず、12‐26で敗れた。松隈監督は「新しい道を模索しながら県大会を勝ち抜き、ここまで来た。新たな歴史の一歩を踏み出したと思う。太安主将に、3年生がしっかりついていったからこその結果だと思う」と話した。太安主将は「ベスト4まで来られてうれしい。でも、自分たちの強味を出しきれなかったので悔しい気持ちもある。今後も選手が自主的に考えるチームづくりを続け、優勝をつかんでほしい」と語った。◇なお、準決勝当日は天理駅南団体待合所でパブリックビューイングが実施された。, 【第35話 夜眠れない人がいる – ふたり】夕暮れまでにはまだ時間があるはずなのに、外はすっかり暗くなっている。やがて雷が鳴り、雨が激しく降りはじめた。カンとツツはとりあえずビョーンさんの店先に避難した。店の前は、サーフボードを乾かしたりするためのウッドデッキになっていて、日差しを遮るテントが付いている。そこに二人は並んで腰を下ろした。雨はかなり降り込んでいるけれど、短パンにTシャツのカンも、ジーンズにタンクトップのツツも気にする様子はない。「なんだか心のなかにも降り込んでくるみたい」ツツは雨のことを言った。それからちょっと困ったように笑った。「ハハは元気?」カンはいまの自分たちの暮らしのことを話した。彼が話し終わると、今度はツツが話しはじめた。サユリさんは大学の非常勤講師で、主に英語を教えている。週に何日かは、知り合いの店でピアノを弾く。フウちゃんも打楽器奏者として活躍している。プロのミュージシャンたちのライブやレコーディングに呼ばれることもあるという。「ときどき通訳の仕事もしているの。アフリカの言葉が話せるので重宝がられているみたい。日本語ができない外国人が起こした事故や事件で、警察から協力を求められることもあるんだって」言葉をおいて、彼女は薄い灰色のカーテンがかかった海に目をやった。「ここで暮らしていたころは、夜眠れない人がいるなんて信じられなかった。わたしなんてベッドに入った途端に意識がなくなって、朝まで夢も見なかったから。健康優良児の見本みたいだったのにね」大学を卒業したあと、ツツは日本の外資系企業に就職した。両親はすでに日本に戻っていた。英語が堪能であることを見込まれての採用だったが、仕事は通常の事務と変わりなかった。英語を使う機会はほとんどなく、むしろ日本人の女性社員よりも、言葉の上でハンディを負うことになった。転職も考えたけれど、親しく付き合っていた会社の同僚との結婚話が進んでいた。彼に引き留められるかたちで会社に残りつづけた。しだいに疲労を覚えるようになり、強い不安にも襲われた。夜は眠れなかった。医者の診察を受けると、ストレス性のものと言われ、適度な運動を勧められて睡眠薬を処方された。別のところでも同じことを言われた。そのうち病院にも行かなくなった。「薬を飲んだって眠れないんだもん」。彼女はいくらか投げやりに言った。「夜のあいだずっと起きていて、昔のことをいろいろ思い出しているうちに、急にカンに会いたくなったの」冗談めかした言い方だったけれど、事態はかなり深刻そうだった。作/片山恭一 画/リン