【“人生の味”が引き立つのは】冬。筆者の住む地方の山あいは、見渡す限り黄色いミカンで覆われます。これ全部、誰が食べるのだろうと、たわいもない想像をしてしまいますが、食卓やリビングで大切な人との語らいに彩りを添えるのでしょう。本当に甘いミカンは、ただ甘いだけではありません。よく味わってみると、酸味に支えられているのに気づきます。これはぜんざいなども一緒で、いくら砂糖を入れても、ただ甘いだけ。ぼやけた甘みでしかありません。そこに塩を入れると、甘みに輪郭が生まれ、はっきり甘いと感じます。塩そのものは辛いだけなのに、味覚とは不思議なものです。人生もこれと同じ。ただ幸せなことが多いだけでは幸福感がぼやけてしまう。つらい出来事が少し入ることで、はっきりとした輪郭を伴った幸せを実感できるように思います。つらい出来事の最中は、もう前を向けないかもしれない、とさえ思いますよね。でも振り返れば、それは、確かな幸せの輪郭づくりに役立っているのかもしれません。Cha, 【野迫川村の朝 – 表紙写真】©wasabitool photography平均標高が700メートルの奈良県野迫川村。夜中に降り続いた雪は夜明け前に消えた。光が差し込んだ瞬間、絶景となった。by 藤浪秀明