天理時報2022年6月29日号6面
【不屈の心が歴史をつくる – 日本史コンシェルジュ 】日本初の本格的な西洋医学の翻訳書『解体新書』 。この翻訳事業は、若狭(現在の福井県)小浜藩の医師・杉田玄白と、豊前(現在の大分県)中津藩の医師・前野良沢を中心に進められました。1770年、良沢は遊学中の長崎で『ターヘル・アナトミア』という、オランダ語で書かれた人体の解剖学書を入手しました。ちょうどこのころ、江戸幕府は医学の発達のために解剖を許可したばかり。翌71年春、江戸に戻った良沢は、杉田玄白と共に、処刑場で罪人の死体の解剖に立ち会います。実は玄白も、別ルートで『ターヘル・アナトミア』を入手していました。二人は、それぞれ持ち込んだ解剖図と実際の解剖を見比べて、あまりの正確さに驚きます。そして、この本を日本語に翻訳しようと決意するのです。蘭学を学んだ経験のある良沢は、単語の一部を理解できましたが、ほかのメンバーは、オランダ語の知識がほぼゼロ。当然、分からない単語が続出し、彼らは長崎から江戸にやって来たオランダ通詞(通訳を担当する幕府の役人)に教えを請うことにしました。ところが良沢の質問に、オランダ通詞は答えることができませんでした。しかし、歴史を変える人物の考え方というのは、素晴らしいですね。良沢と玄白は「自分たちは、オランダ通詞にさえできないことを成し遂げようとしているのだ!」と、闘志を一層かき立てられたのです。とはいえ、闘志だけで翻訳できるほど現実は甘くありません。オランダ語の言葉の中に、どうしても日本語に置き換えられないものが出てきました。つまり人体の器官や組織で、日本語の名前がまだついていないものがあったのです。結局、彼らは言葉そのものを作ってしまいます。「神経」「動脈」「軟骨」などは、解体新書の翻訳で生まれた言葉です。こうして彼らの不屈の精神と創意工夫が、不可能とも思われた事業を成功へと導き、74年に『解体新書』は発刊されました。その後も良沢はオランダ語の書物の翻訳に尽力しますが、本来の藩医としての仕事を怠っていると同僚から訴えられたことがあります。これに対し、中津藩主・奥平昌鹿は「医師としての日々の仕事も大事だが、後世の民に有益なことを成そうとするのも立派な仕事である」と、良沢を支援し続けました。実は高価な『ターヘル・アナトミア』を良沢に買い与えたのも昌鹿でした。偉業の陰に名君の存在があったことも、記憶に留めておきたいですね。白駒妃登美(Shirakoma Hitomi), 【亡き夫の思い受け継ぎ信仰を末代へ – 読者の広場】栢下豊子(81歳・京都市)昨年11月、所属教会の団参に家族で参加した際、4人の孫のうち最年少の18歳の孫が初席を運びました。そのとき、孫の代まで信仰が伝わっていることがうれしくて、出直した夫の姿がまぶたに浮かびました。夫の家系は代々、父親が短命で、孫の顔を見ることなく出直しています。そんな中も、信仰の代を重ねるうちに、夫の代で孫の顔を見ることができたのです。夫は初孫が生まれたとき、「この喜びを孫の代まで伝え、3世代揃って信仰させていただく」と決意し、縦の伝道により力を入れるようになりました。以後、夫は所属教会の月次祭に孫を連れて一緒に参拝したり、おぢば帰りをしたりするなど、孫たちが身近に教えを感じることができるよう精いっぱい努めました。夫は6年前に74歳で出直しました。その後、孫たちは皆、17歳を過ぎると別席を運ぶように。亡き夫の思いがしっかりと伝わり、自ら信仰を求めようとする孫たちの姿を、とても頼もしく感じています。また、孫たちは大学や仕事が休みのときは、所属教会の月次祭や、わが家の講社祭に参拝してくれます。家族ぐるみで信仰できることに、いま喜びいっぱいの毎日を過ごしています。これからも、亡き夫の縦の伝道の思いを受け継いでいきたいと気持ちを新たにしています。, 【初夏の親里で演奏会 – 音楽トピックス2題】初夏の親里では、管内学生による音楽の演奏会が徐々に再開されている。天理高校弦楽部・OB会の第11回「ふれ愛ストリングス」が6月4日、天理高吹奏楽部の第39回「定期演奏会」が6月11、12の両日、それぞれ開かれた。管内高校生による各ステージの模様を紹介する。家族で弦楽鑑賞3年ぶりに第11回ふれ愛ストリングス 天理高弦楽部・OB会「ふれ愛ストリングス」では、天理高弦楽部が同部OBと共に、3年ぶりに舞台で演奏した(6月4日、陽気ホールで)天理高校弦楽部・OB会は6月4日、第11回「ふれ愛ストリングス――家族でふれあう弦楽器の調べ」を、3年ぶりに陽気ホールで開催。会場には225人の家族連れが詰めかけた。同演奏会の趣旨は、親子で弦楽器の演奏を気軽に楽しんでもらおうというもの。ステージはJ・シュトラウス2世作曲の『トリッチ・トラッチ・ポルカ』で幕開け。続いて、クラシックの名曲のほか、『アンパンマンのマーチ』や『ロマンスの神様』など、幅広い世代に馴染みのある曲が奏でられた。また、演奏に合わせて弦楽部員がダンスを踊る場面もあり、明るい雰囲気で観客を楽しませた。恒例の参加型企画「イントロ当てクイズ」では、人気アニメの主題歌などが披露され、会場は大いに盛り上がった。伝統の天理サウンド響かせ第39回定期演奏会 天理高吹奏楽部部員たちは、一手一つに心をそろえて演奏した(6月12日、天理市民会館で)天理高校吹奏楽部は6月11、12の両日、第39回「定期演奏会」を天理市民会館で開催、県内外から多くの吹奏楽ファンらが来場した。両日とも同じプログラムで実施。第1部は、吹奏楽で長年親しまれている定番曲『フェスティーヴォ』(ヴァーツラフ・ネリベル作曲)で開幕。続いて今年のコンクール課題曲や、『ハンガリー狂詩曲第2番』(フランツ・リスト作曲)を演奏した。第2部のスタートは『新・童謡オープニング』(岩井直溥編曲)。『春がきた』や『たき火』などの童謡14曲をメドレーで演奏した。また、1年生によるダンスなどのパフォーマンスで会場を盛り上げた。武田直也キャプテン(3年)は「日ごろ演奏を聞いてくださる方々に『どう感じてもらいたいか』を一人ひとり考えて、一手一つの演奏をつくっている。これからも伝統の“天理サウンド”を届けられるよう、練習に力を入れていきたい」と話した。