天理時報2022年2月23日号5面
森谷昌久さん72歳・天浦分教会ひふみ布教所長・神戸市ところが、1年ほど経過したころに容体が悪化。神戸市内の病院に入院することになった。医師から「あと1年の命です。助かる道は骨髄移植しかありません」と告げられた。あらためて身上の深刻さを知った昌久は、死の恐怖が頭から離れず、仲間や家族への申し訳なさばかりが募り、人知れずベッドで涙を流した。そんななか、見舞いに訪れた木下修一朗・天浦分教会長から、あることを提案された。[1一人、おさづけを取り次がせていただこう」昌久は木下会長の言葉を素直に受け、「毎日、新しい人におさづけを取り次がせていただこう」と心に決めた。自らの身体に点滴をつないだ状態で病院内を歩き回り、待合所などにいる人に声をかけた。同じ境遇に置かれた者同士ということもあってか、数多くの人におさづけを取り次ぐことができた。なかには、昌久の声かけを一緒に手伝ってくれる人もいたという。こうした生活を続ける中で、昌久は次第に自分の心の向きが変わっていくことを実感した。「おさづけの取り次ぎを始める前は、自分の身上のことばかり考え、不安に苛まれていた。しかし、人のたすかりを願ううちに、自分の身上への執着が薄れ、気持ちも落くようになった。『人たすけたらわがみたすかる』と教えられる通り、人のたすかりを願うことの大切さを「学んだ」入院して半年が過ぎたころ、骨髄移植のドナーが現れることを待つ昌久のもとに、「適合者が見つかった」との知らせが届く。一人の適合者が見つかることさえ難しいとされるなか、昌久には1人ものドナーが見つかった。「親神様のご守護を感じずにはいられなかった」「どこの病院で手術しますか?」と医師から尋ねられた昌久は、「親神様の一番近くで」との思いから、「憩の家」での手術を希望した。平成15年5月、「憩の家」で無事に骨髄移植手術を終えた。骨髄が体に定着するまでの数週間、身体的につらい時間が続いた。そんな昌久を励ましたのが、ドナーから寄せられた一通の手紙だった。提供者の氏名が伏せられた手紙には、骨髄バンクに登録するまでの経緯や、骨髄提供が決まってからの心境、個人情報を知らされていない移植相手への思いなどが綴られていた。見知らぬ人をたすけたいと願うドナーの手紙から勇気をもらった昌久は、徐々に体力を取り戻し、半年後には仕事に復帰できるほどの鮮やかなご守護を頂いた。「ドナーの方のおかげで、私は無い命をたすけていただいた。この節を通じて、与えられたこの命を、もっと人だすけのうえに使わせていただかなければと、強く思うようになった」自身の経験を次代に伝え骨髄移植を乗り越え、再び教会に住み込みながら弁護士としての仕事に精を出す昌久。忙しい毎日を送るなか、以前よりも「親孝行と人だすけ」を意識するようになった。教会に住み込んだ当初から、木下寿美子・天浦分教会2代会長に「親孝行と人「だすけ」に努めるよう仕込まれてきた。身上を通じて、その大切さを学んだ昌久は、庫教区の顧問弁護士を務めるなどお道の御用に尽力。その傍ら、休日にはにをいがけに歩き、別席者や修養科生をお与えいただくなど、おたすけにも心を尽くした。骨髄移植から15年。心配された再発は無く、一時的に体調を崩すことはあっても、大難を小難、小難を無難にお連れ通りいただいた。70歳で弁護士業をやめた昌久は、現在も教会生活を続けている。一昨年、天浦分教会の歴代会長合同年祭を記念して出版された冊子『にをいがけの大切さ』では、自身がこれまでおたすけに歩いてきた経験をもとに、にをいがけの大切さについて執筆。いまは、今年6月の天浦分教会創立80周年記念祭に合わせて刊行される記念出版物用の原稿に向かっている。「いまの自分に何ができるかを考え、身上を通じて学んだおたすけの大切さを、次代を担う若者に伝えたいとの思いから原稿を書かせていただいている。これからも、お与えいただいた命を、人だすけに捧げていきたい」(文中、敬称略)文=島村久生「憩の家」で骨髄移植手術を受けた森谷さん(右)。一日一人のおさづけの取り次ぎは、手術後も続けた弁護士時代には依頼者を別席へお連れしたこともあるという(60歳ごろ)時報俳增壇ふじもとよしこ選神殿の寒さ忘るる祈りかな大津市平井紀夫鳴り物のリズム軽やか春隣堺市加藤恵秋季語と知り妻は柚子湯を立てにけり江別市杉山忠和恵方道杖の一歩の向くところ鳥取県野間田芳恵の干支の七度めぐりて年新た東京都坂田鏡介松に雪教祖の御苦労偲ぶ朝旭川市藤崎教紋の白地まぶしき春大祭箕面市志賀道雄静けさや竹取る山の年の暮天理市北をさむ辛口の酒で黙食牡丹鍋名張市霧道三明三寒に耐へて大和の四温晴明石市松本和子読み返す養生訓や寒の水天理市山田教祖思い寒さの不足言うまいと名古屋市伊園三郎雪兎持って帰ると五歳の児札幌市田森つとむ冬日向忘れ居し事ふとよぎり秋田市髙橋重維ラガー等の固まり意志の宿りたる天理市中山冬木立素といふことの美しく千葉市新江堯子隙間風不在の妻の部屋越えて門真市傳石敏治寒の空通天閣に赤点灯堺市坂口知子晩年と言う書き初めをさりげなく滝川市家納千世子寒気来る日本列島縮かまる千葉県樋渡忍寄らばゆき追えば飛び立つ鴨の群れ和歌山市西澤喜久治氷柱みて背中の孫が背のびする水戸市富田直子冬銀河スマホの中に夢果てぬ高崎市正田久美代寒椿堅き握手で相別れ横浜市稲村ムツ福寿草子供食堂なごやかに東大阪市瀧本良子空き缶の電車の旅で年越しす宇治市原清彦春の七草数えつつ畔歩く津山市工藤圭志選者詠鳥声と光りの乱舞春立ちぬ【評】平井さん-神殿に参拝している作者、現状を越えて親神様・教祖しか見えないところでの、深く真剣な祈りなのです。加藤さん-鳴物すべてが調和して、リズムも軽く、あたかも春を呼び寄せているかのようです。杉山さん俳句を嗜む夫のために、最適の季語「柚子湯」を用意された奥さまです。佳句ができましたよ。次回は、4月末までの到着分から選歌・選句。投稿は短歌3首、または春の季語(2、3、4月)を用いた俳句3句まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、左記までお送りください。〒632‐8686天理郵便局私書箱30号「時報歌壇」または「時報俳壇」係Eメール[email protected]