天理時報2022年9月7日号5面
苦しむ子供たちに“生きる力”を15年ほど前、国連WFPのボランティア活動を始めたころ、休日ににをいがけに歩くようになった。恩返しの思いを胸に、毎週のように戸別訪問に回ったものの、断られる日が続いた。そんななか、次第に「そもそも世の中の人は、教えに耳を傾けるよりももっと前の段階で困っているのではないか。まずは、おたすけが必要なのでは」と感じるようになったという。「布教所として、何か地域に根ざしたおたすけ活動ができないか」家族で相談を重ねるなか、4年前の5月、真理さんが「こども食堂」を開くことを提案。家族の賛同を得て、同年7月に「せいじゅんたすけあいこども食堂」が始まった(右記QRコードから過去記事参照)。すぐに口コミで話題となり、回を重ねるごとに参加者が増えた。それに伴い、県内外からボランティアの志望者も集まるなど、徐々に支援の輪が広がり、2年前にNPO法人化した。多くの子供たちとふれ合う中で見えてきたのは「想像よりも深刻な状況に置かれた子供たちの実態だった」。「こども食堂」の利用者の約半数が発達障害のある子供だった。コミュニケーションがうまく取れず、人の気持ちを理解することが苦手。それが原因で、学校でいじめに遭い、不登校になった子も少なくなかった。ほかにも、ひとり親家庭で生活困窮状態にある子、育児放棄や家庭内暴力が疑われる子など、多くの子供たちが何らかの事情を抱えていた。「食事提供などの短期的な支援だけでな子供たちに生きる力”を身に付けさせるための長期的支援が必要ではないか」そう感じた乾さんは、職能教育や農業体験などの体験型学習の機会を設けた。2年前からはプログラミング教室を開き、乾さん自ら、子供たちにコンピューター技術を伝えている。「これからの社会を生きていくには、コミュニケーション能力や自ら考える力、物を創造する力といった能力が必要だ。子供たちには、さまざまな体験を通じてそうした力を養ってもらいたい」また、ひとり親家庭への生活支援や子育て相談会なども実施し、保護者への支援にも力を入れている。「こども食堂」をきっかけに、さまざまな支援に取り組む「せいじゅんたすけあいこども食堂」の活動は、今年6月に閣議決定された「令和4年度子供・若者白書」(所管・内閣府)で紹介されるなど、地域における先駆的な子育て支援の一つとして注目を集めている。現在、5年目を迎えた同食堂。昨年の開催行事回数は2回、参加者総数は4千35人、ボランティアスタッフは1千人を数える県内最大規模に発展した。こうしたスタッフの中から、お道につながる人も出てきているという。乾さんは、「『こども食堂』の醍醐味は子供たちの変化にある」と話す。「最初は落ち着きがなく、自分に不都合なことがあると泣き叫んだり、暴れて物を壊したりするような子が、2年3年と通い続けるうちに、自ら片づけをするようになったり、積極的に手伝ってくれたりするようになる。さまざまな新しい支援に取り組む中で、思い悩むこともあるが、そういった子供たちの成長が何より楽しみだ」現在、大阪分教会の役員と少年会大阪団団長も務めている乾さん。月次祭では、「こども食堂」を利用する人たちのたすかりを願っているという。大学での研究に加え、「こども食堂」での精力的な活動など、多忙を極める乾さんだが、こうした諸活動の根底には、もとよりお道の教えがあると話す。「『たん(とこのみちすじのよふたいハみなハが事とをもてしゃんせ』(おふでさき十号)とお教えいただくように、環境問題も子供たちの将来への不安も、の中で起こってくることはすべて〝わがだと思っている。困っている人は、まだまだ大勢いる。お道の信仰者として、これからも大学での研究と『こども食堂』を通じて、難渋を抱える人たちの手だすけをしていきたい」文=島村久生コロナ前には、「こども食堂」に来た子供たちを連れて、おぢば帰りをしたこともプログラミング教室は、キャンセル待ちが出るほどの人気だという