天理時報特別号2022年3月号3面
けれども、あの日の母の寂しさには到底及ばないでしょう。なぜなら、娘たちの嫁ぎ先は車でせいぜい2~3時間の場所ですし、いまは携帯電話もLINEもある時そう思うと、一層あの日の母の涙が頭をよぎり、胸がいっぱいになります。当時の私は、とてもそんなところにまで気持ちが及びませんでした。それどころか、私のほうが母に気を使わせていた部分もあります。女手一つで子供を育て上げた北国の母は強く、寂しいそぶりは決して見せない人でした。若いころから苦労を重ねてきた母の、心の広さと優しさを、今さらながら感じている昨今です。「相手の気持ちになって考えよう」とは、日常よく使われるフレーズですが、言うは易く、行うのは本当に難しいと思います。実際には不可能なのかもしれません。しかし、そうであっても、ひたむきに寄り添い続け、「少しでも、少しでも」と相手の思いを考えていけば、次第に心の垣根が低くなって、気持ちが通じ合う日がやって来る。それが思いやりを持つということだと、母の背中が教えてくれたような気がします。そんな母も1年前に天上へと旅立ち、ふるさとの星となりました。雪が解けて芦別に遅い春が来たら、可愛がってくれた孫たちと、初対面となる曾孫も連れて、お墓参りに行きたいと思います。「星の降る里」で思い出を語り合えば、きっと母も喜んでくれるでしょう。帰るときには、やはり寂しい思いをさせるかもしれませんが、今度は大丈夫。たくさんの星の仲間に囲まれて、笑顔で見送ってくれるに違いありません。イラストレーション:西村勝利私の好きな風景表紙のはなし西薗和泉「公民館の桜」どんな建物でも、春になって入り口付近の桜が咲いている様子は、風情があっていいものです。建物も、とても華やかで誇らしげに見えます。写生場所……京都府木津川市加茂町IzumiNishizono西蘭和泉水彩画展毎日がスケッチ日和〟アートスペース上三条奈良市上三条町42022年4月5日(火)~10日(日)10:00~18:00(最終日16:00まで)