天理時報2022年11月2日号6面
【感動を生き続ける – 成人へのビジョン8】社会学者・見田宗介氏が4月に亡くなりました。弟子の大澤真幸氏が、初めて見田氏のゼミを受けたのは18歳のときでした。イラスト・かにたづこ「私はそのとき、心底から納得した。生きることと学問することとはひとつになりうる、と。(中略)私は今でも、あのときの感動の中で仕事をしている」(『朝日新聞』2022年4月14日朝刊) ――何か美しいものにふれた気がしました。人間は「感情の動物」だといいます。私たちは、理屈よりも感情に動かされます。ですが通常、感情は持続しません。喜びも悲しみも永遠には続かない。一方、記憶は感情とは別に保存されるようです。記憶の種類にもよりますが、反復し定着したものは滅多に失われません。たとえば僕は、小学校で習った九九をいまでも覚えています。ただ、九九は私の感情を刺激しません。私を行動へと突き動かすことはない。それは必要に応じて引き出されるデータのようなものです。お道の信仰には「心定め」があります。心を定める。神様と約束する。内容は人それぞれですが、そこには必ず契機があったはずです。本人にとって大切なきっかけが。しかし時が経てば、そのときの心の震えや感動は薄れがちです。感情は持続しない。約束は覚えていても、そのときの心境が、いま・ここに現れてこない。こうなると心定めは、ややもすればノルマや決まりに近いものになってしまいます。大澤氏は、いまも感動を生きています。記憶が無味乾燥な情報とならず、いまも現実に働きかけている。では、どうすればそれが可能になるのでしょうか。私の答えは「対話」です。ご存命のおやさまとの対話。「地上の月日」たるおやさまが存命でいらっしゃる。それは私たちに交流(対話)の場が開かれているということでしょう。同時に、おやさまからお教えいただいたおつとめも、直接お書きくださった原典の拝読も、私たちが心を込めてなせば、それはすべて対話に成り得ます。そのとき感じるおやさまの温もりが、私たちの信仰を生きたものにしてくださる。そう思うのです。「私は今でも、あのときの感動の中で仕事をしている」。信仰の世界こそ、そうありたいと願います。可児義孝, 【「中国古典」の軌跡をたどる – 天理図書館開館92周年記念展】天理参考館で11月28日まで天理図書館(安藤正治館長)は現在、開館92周年記念展「中国古典名品展」を天理参考館で開催している。国宝 南海寄帰内法伝奈良時代末期(8世紀)写今展では、天理図書館が所蔵する中国の古典約10万冊の中から、国宝・重要文化財を含む選りすぐりの名品40点を公開。日本と中国のさまざまな古写本、五山版や地方版などの和本(日本で作られた本)、宋・元・明・清、各時代の唐本(中国で作られた本)の三つのコーナーが設けられており、いずれも戦乱などによる消失の危機を乗り越え、大切に伝えられてきた貴重な書物だ。会場では、中国本国も含めて現存する最古の伝本と考えられている国宝『南海寄帰内法伝』や、11世紀の中国で名を馳せた政治家・文人、欧陽脩の詩文全集である国宝『欧陽文忠公集』など、古代から日本文化にも多大な影響を与えてきた中国古典を鑑賞できる。中国古典の貴重な書物をひと目見ようと、多くの人が来館した(10月25日、天理参考館で)初日の10月25日には、貴重書を間近で見ようと、多くの人々が天理参考館を訪れた。◇会期は11月28日(月)まで(休館日は11月1、8、15、22日)。開館時間は午前9時30分から午後4時30分まで(入館は午後4時まで)。記念展の詳細は下記URLから。https://www.tcl.gr.jp/exh/exh-5753/, 【勇気を持って踏み出せば – 読者のひろば】髙橋ひろみ(53歳・天理市)先日、本部神殿へ参拝に行ったときのこと。小さな男の子を連れた家族が回廊を歩いていました。幼い男の子は歩くのもやっとの様子で、回廊をよちよちと歩いています。途中、楼門上部からの下り坂に差しかかったとき、転ぶのが怖いからか、腹ばいになりながら進んでいきました。その様子をそばで見守っていた両親は「大丈夫、怖くないで。立って歩いてみ」と、優しく声をかけました。すると男の子は恐る恐る立ち上がり、一歩ずつゆっくりと下り坂を歩き始めたのです。その息子の姿を見た両親は、「すごい!」と大喜びしていました。勇気を持って一歩を踏み出した男の子と、わが子の様子を笑顔で見守る両親。回廊で偶然見かけた親子の様子に、親神様と私たち人間の関係を垣間見るように思えたのです。そして、たとえ困難だと思えることでも、私たち人間が勇気を持って一歩を踏み出せば、親神様はきっとお喜びくださるのだろうと感じました。秋季大祭で「諭達第四号」が発布され、来年から教祖140年祭への三年千日活動が始まります。この旬に、親神様・教祖にお喜びいただけるよう、私もあの男の子のように、勇気を持って自分にできるおたすけの一歩を踏み出したいと思います。