天理時報2022年11月9日号8面
【第30話 誰のものでもない命 – ふたり】農場はいつになくひっそりとしていた。いま新太はベッドの上で手術を待っている。のぶ代さんと保苅青年は病院に詰めている。省吾さんが豚に餌をやっていた。将来は新太に任せたいと思っている仕事だ。「人間に飼われている豚のほとんどは、生まれてすぐに母親から引き離され、ろくに太陽も浴びないまま配合飼料を与えられ、大きくなったところで肉にされる。そのうち天罰がくだるな」彼の怒りが豚を飼う人間に向けられているのか、新太を苦しめている病気に向けられているのかわからない。きっと両方だろう。省吾さんのなかで、新太と豚は切り離せない。新太にとっても、豚は大切な友だちだ。「動物にやさしくするのは大切なことだ。動物が苦しんでいる姿を見て、かわいそうだと思う。助けてやりたいと思う。その気持ちが大事なんだ。新太はいい魂をもっている。だから何があっても大丈夫だと、おれは信じている」カンは必要な野菜を自分で収穫して店に戻った。ランチの下ごしらえをしていると、ハハが焼き上がったばかりのパンを持ってきた。いつもと変わったところはないけれど、何かが大きく違っていた。二人は無言で支度をつづけた。それぞれが自分の思いにとらわれているみたいだった。一人の子どもに取り憑いた病気が、まわりにいる大人たちの日常を、色も音もないものにしていた。その日、カンは午後から新太の見舞いに出かけた。本人に会うことはできなかった。のぶ代さんや保苅青年と少し言葉を交わしただけで病院を後にした。〈大切な友だちが生と死の境をさまよっています。幼い友だちの死を、ぼくは思い描くことができません。彼はまだ四つになったばかりです。生の果てに訪れるという死。年老いるまで生きた人にとっては、そうかもしれません。でも、ようやく生きはじめたばかりの子どもに訪れる死とは、なんでしょう? そんなものに意味があるとは、どうしても思えません。考えて、考えて、さらに考えているうちに、頭が自分を離れてしまいました。おかしな言い方ですが、本当にそんな感じでした。ぼくは病院の待合室にいました。窓の向こうに目をやると、庭木の緑が太陽の光に輝いています。どこでも目にする、ありふれた景色です。でも、そのとき木の葉も太陽も、自分とともに息をしていると感じました。命が自分を生きている。命が命を生きている。束の間、死はぼくから離れていました。この世界から出ていって、どこにもありませんでした。誰のものでもない命があるような気がします。〉作/片山恭一 画/リン, 【阪神大学リーグ4季連続V – 天理大野球部】天理大学野球部は先ごろ、神戸市のG7スタジアム神戸で行われた「阪神大学秋季リーグ戦」第5節で関西国際大学に勝利。4季連続23回目のリーグ優勝を決めた。春季リーグ戦を制した後、天理高校野球部出身の中川彰・新キャプテン(3年)のもと、「選手から動く」のスローガンを掲げて始動した。投手陣に真城翔大投手(同)と藤居海斗投手(同)の二本柱がそろい、守備面は10月20日のプロ野球ドラフト会議で千葉ロッテマリーンズから2位指名を受けた友杉篤輝選手(4年)が内野陣を支える。一方、打線は友杉選手と、体格を生かした強力なスイングが持ち味の俵藤夏冴選手(同)がリードする。秋季リーグ戦開幕となる第1節。大阪電気通信大学に1‐4で敗れ、黒星スタートとなった。試合後のミーティングで藤原忠理監督(57歳)は「3季連続で優勝していたチーム全体の慢心と、主に投手陣の調整不足」を指摘。主力メンバーを組み直して2戦目以降に臨んだ。連敗を避けたい2戦目では、先発の藤居投手が好投を見せ、6‐2で勝利。続く神戸国際大学戦も相手打線を無失点に抑え、連勝で勢いに乗ると、以後も白星を重ねていく。迎えた最終節。リーグ1位の天理大は、同2位の関西国際大との直接対決に臨んだ。引き分け以上で優勝が決まる1戦目。初回に1アウト一、二塁のチャンスをつくるも無得点で終える。その後も投打がかみ合わず、0‐1で敗れた。負ければプレーオフにもつれ込む最終戦。3点を追う天理大は、五回2アウト二塁から友杉選手がタイムリーツーベースを放つ。さらに、持ち前の快足を生かして三塁への盗塁を決めると、続く吉田元輝選手(3年)の強打が相手三塁手のグローブを弾き、1点を追加した。しかし直後に1点を奪われ、2‐4とリードを広げられて迎えた九回表の攻撃。1アウト一塁から近藤遼一選手(3年)のタイムリー二塁打を皮切りに、連打や相手の暴投、失策が重なり、一気に逆転に成功。その裏の守備では、満塁のピンチを無失点で切り抜け、5‐4で勝利。4季連続23回目の優勝に輝いた。なお、藤居投手が最優秀選手賞、俵藤選手、吉田選手、早川空選手(同)がベストナインに選ばれた。藤原監督は「2年間勝ち続けることは非常に難しい。それでも、選手一人ひとりが自分の考えをしっかり持ち、粘り強く戦ったからこそ、4連覇を達成できた」と話した。◇なお、天理大は「関西地区大学野球選手権」兼「明治神宮野球大会関西地区代表決定戦」に出場。2日に行われた第2代表決定戦で関西大学と対戦したが、0‐1で敗れ、明治神宮野球大会への出場は叶わなかった。, 【39年ぶり関西大会優勝 – 天理大空手道部】天理大空手道部は、10月16日に近畿大学記念体育館で行われた第63回「全関西大学空手道選手権大会」に出場。男子団体組手1部で優勝、男子団体形の部で準優勝した。同部の男子団体組手の部での優勝は、昭和58年以来39年ぶり。