「9060問題」の移行期に – 視点
高齢の親が、長年引きこもる子供を支える「8050問題」と呼ばれる家族形態が、親子の高齢化・状態の長期化により「9060問題」へと移行し始めているという。
「8050問題」とは、80代の親が50代の子供と同居して経済的に支援する状態をいう。これがさらに高齢化した状態が「9060問題」である。
内閣府の調査によると、ひきこもりの数は15〜39歳で推計54万1,000人、40〜64歳で推計61万3,000人。7割以上が男性で、ひきこもりの期間は7年以上が半数を占める。
「8050問題」では、経済的な負担や生活の困窮などが主な問題であったが、「9060問題」へ進むと、親の介護や、親が亡くなり経済支援が無くなるケースなどが起こる。
ひきこもりには、精神疾患や発達障害などにより周囲との摩擦が生じて引きこもる場合と、疾患や障害などの要因が原因とは考えにくい場合がある。後者は、受験や就職の失敗といった挫折体験、不登校やいじめなどの対人関係の問題が引き金となり、社会参加が難しくなってしまったもので、「社会的ひきこもり」とも呼ばれる。
『社会的ひきこもり 終わらない思春期』(PHP新書)で、ひきこもりの存在を広く社会に伝えた精神科医・斎藤環氏の話を聞いたことがある。
氏は、親が精神科や行政の支援センターへ相談するなどして、ひきこもり本人との対応術を身につけることが先決だという。「8050問題」は、子供が引きこもったときに、親が外へ助けを求めず、家族だけで解決しようとすることが長期化の原因ともいわれる。外部からたすけの手を差し伸べることが求められている。
私たちの周囲にも、ひきこもりに悩む家庭はないだろうか。本教では長年、さまざまなおたすけに取り組んできた。こうしたおたすけ活動の蓄積は、教区・支部というつながりの中で、一人ひとりの力を生かす“おたすけネットワーク”となり、出口の見えない問題に悩む家族への導きの手になるのではないだろうか。
(加藤)