ふと庭を見れば、北風のなか耐え忍ぶように咲く寒椿の赤い花が、ひときわ目を引きます。容赦なく吹きつける木枯らしや吹雪。陽が当たっても、弱い斜めの日差しでしかありません。

「よりにもよって、こんな時季を選んで咲かずともよいのに。もっと暖かくなってから咲けば？」と声をかけたくなるほどです。

でも、もし寒椿が春に咲く花だったとしたら、どうでしょう。もしかしたら、一斉に咲き誇る色とりどりの花々に埋もれて、それほど目立たない存在だったかもしれません。

色彩に乏しい冬の庭で、風景に彩りを添える寒椿の赤い花は貴重です。それゆえ古来、庭木として用いられ、長く愛されてきました。寒椿が愛好される理由は、冬の厳しさに耐え、なおも花を咲かせる健気さゆえでしょう。

みんなが下を向いているときこそ顔を上げてみる。力は要りますが、筆者も寒椿に勇気をもらってやってみることにしました。きっと、誰かの力になるでしょうから。

Cha