馬との触れ合い心と体の療法に 特別講義「ホースセラピーⅠ」始動 – 天理大学
天理大学(永尾比奈夫学長)は4月21日、今年度新たに開講した天理大学特別講義2「ホースセラピーⅠ」の第2回「実習 馬術・馬具の知識(用具等)、馬の調教」を実施。元JRA(日本中央競馬会)調教師で一般財団法人「ホースコミュニティ」代表理事を務める角居勝彦氏(鹿島大教会大輪布教所ようぼく)が講師として登壇し、馬具の使い方やホースセラピーの効果について話した。
ホースセラピーとは、アニマルセラピー(動物療法)の一つ。馬との触れ合いが心理療法につながることに着目したもので、障害がある人などの精神機能と運動機能を向上させるリハビリテーションの一種として注目されている。
天理大学馬術部は2019年、飼育する馬の力によって社会に貢献したいと、ホースセラピー活動を始めた。角居氏を講師に招いて「ホースセラピー講演会」を開催。翌年からは、天理市の不登校児に対する支援活動を行う「天理市不登校等親の会 いなほ」と連携し、小・中学生を対象に、家族単位での「ホースセラピー」を実施してきた。同部は現在、「天紫(てんし)」「天優(てんゆう)」「天樹(てんじゅ)」「天天(てんてん)」の4頭の馬によるセラピーを展開している。
こうしたなか、今年度から同大の授業科目として、新たに「ホースセラピーⅠ」が開講。同講義はJRA寄付講座として実施され、科目履修生として学外の人も受講することが可能(今年度の募集は終了)。同科目の単位を取得すると「中級バイオセラピスト」の受験資格が与えられる。
実演交えながら解説
角居氏は厩務員やJRAの調教師時代に、けがなどによりレースに勝てず、殺処分される馬たちの姿を見て、「この子たちを救う道をつくりたい」との思いを抱いた。そして、引退した競走馬のセカンドキャリアの構築やホースセラピーの提供を行う、一般財団法人「ホースコミュニティ」を立ち上げるに至った、と話した。
続いて、乗馬・馬術の種類のほか、さまざまな馬具について実物を示しながら説明した。
途中、芦毛のポニー「天天」が登場。角居氏が乗馬し、馬を歩かせながらホースセラピーの有効性について話を進めた。
その中で「馬が歩いているとき、馬上の人の体は、二本足で歩いているときと同じように動く」と解説。歩行のときと同様に筋肉が動くことから、乗馬は下半身を痛めている人が歩く練習にもなる、と述べた。
さらに、馬が歩く際に、人は無意識にバランスを取るため、ゆがんだ体幹が整えられることや、体の重心がずれている人が乗ると、馬が自然と重心を整えようと働きかけることを指摘。そのうえで「馬は感受性が豊かで、人の些細な動きにも反応する。そのため、馬と意思の疎通を図ることで、ひきこもりやうつの人のメンタルケアにもつながっていく」と語った。
同講義では今後、馬の基礎知識を学びつつ、世話や乗馬などの実習も行う予定だ。
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講義を終えた角居氏は「若い人たちがホースセラピーに関心を持ってくれてありがたい。馬の福祉が人の福祉につながる。広い意味で、おたすけにもつながることに、私自身も魅力を感じている。今後、ひきこもりやうつに悩む方々へのケアに活用してもらえれば」と話した。