新しい環境での心得 – 人と関わる知恵
金山元春
天理大学教授・本部直属淀分教会淀高知布教所長
新年度です。進学や就職、あるいは転勤などで環境が大きく変わった人もいるでしょう。そこで今回は、新しい環境で心得ておきたいことについてまとめてみます。特に大きな変化はないという人も、そうした「新人」を迎える側として参考にしてください。
新しい環境に入ると誰でも不安や緊張を覚えますが、同時に、新生活に対する期待も大きくなります。憧れの学校に入学したり、夢だった仕事に就いたりすれば、「よし、やるぞ!」と気分も高まるでしょう。心理学では、これを「ハネムーン期」と呼んでいます。意欲があるのは良いことですが、最初から飛ばしすぎると思わぬ失敗をしてしまうことがあります。ゆっくりお茶を飲むなど、意識してひと息つく時間をつくるようにしましょう。
新人を迎える側は、まずは新しい環境に居場所を用意することを心がけてください。
「どこから通っているの? あそこなら、おいしいパン屋さんがあるよね」などと、雑談から関係をつくるのもおすすめです。
実際に新生活が始まると、仕事の内容が想像していたものと違うことに失望したり、新しい人間関係に悩んだりと気分が不安定になる「落ち込み期」がやって来ます。この時期に、不安や焦りから衝動的に動くと、かえって状況が悪化し、自分を否定したり、周囲に不満をぶつけたりして、気分が一層落ち込むという悪循環に陥ります。戸惑うことがあっても、「そういう時期なんだ」と受けとめて、その環境で求められていることにコツコツと取り組んでいれば、ほとんどの人は徐々に折り合いをつけられるようになり、新しい環境の良い面も見えてきて、やがて「回復期」に至ります。
「前にいたところでは○○だったのに……」と言いたくなるときもあるでしょうが、迎え入れた側として良い気はしませんので、これは禁句です。分からないことは「教えてください」と素直に頼みましょう。ただ、新人としては「忙しいのに迷惑じゃないかな」という気持ちから言いだしにくいこともあるので、迎える側も配慮して、「お疲れさまです。もう慣れましたか? 分からないことがあれば遠慮なく言ってくださいね」などと、笑顔で声をかけてください。これも素敵な“おたすけ”です。