“どのように働くか”を心に – 視点
2023・8/9号を見る
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新年度に入って4カ月近く経ち、「配属ガチャ」なる言葉が交流サイト(SNS)で話題だという。新卒社員が配属先の当たりはずれを、開けてみなければ中身が分からないカプセル玩具にたとえた隠語である。たとえば事務職希望で入った会社で、人手不足を理由に肉体労働の現場へ配置され、はずれを引いたと感じて転職するケースなどに使われる。「はずれ」という語感が、いまどきの労働観を表しているようだ。
では、新入社員の中で希望の職種に就いた人は、どれくらいいるのか。内閣府の青少年調査によると、仕事を選ぶ理由として「自分の好きなことができる」が90%であったのに対し、実際に好きな仕事に就いているのは約3人に1人という結果がある(平成24年版子ども・若者白書)。
哲学者ゲーテは「人生に成功する秘訣は、自分が好む仕事をすることではなく、自分のやっている仕事を好きになることである」と言ったと伝わる。日本には「三日三月三年」という言葉がある。職場や仕事に習熟する時間を指したもので、三日やれば三月もち、三月もてば三年続く。そうして知らずしらず、自分の仕事に生きがいを見いだし、やがて天職と思えるようになる。それは「好きなこと」ではなく、「好きになる」という発想の転換でもある。天職とは、どこか別の所にあるのではなく、自分の中で養っていくものかもしれない。
一方「働く」という言葉には、「あの人は働き者だ」というように、仕事や日々の暮らし方への姿勢を表す意味もある。教祖は「働く」ことについて、数々のご逸話の中で諭されている。何ごとも喜んで、陰日向なく、自分のことと思い、周囲の人たちの役に立つように、真実込めて“はたらく(側楽)”ようにと――。働くことを通して、教えに基づく生き方をお示しくださっている。
仕事でも雑用でも、どんな小さなことでも心を込めてつとめる。その働きが誰かの役に立ち、世の人々の喜びに寄与していると信じることで、やがて仕事への情熱が高まり、日々の生きがいともなる。それは天の理に支えられた喜びである。どの仕事に就くかも大事だが、“どのように働くか”が、いつの時代にも大切な心構えであろう。
(加藤)