時報歌壇(5月25日号)- 植田珠實 選
子、孫らのかけくるメールあたたかく今宵の糧にいだきてねむる
尾道市 福島悦子
春の日にあのやさしげな眼差しに見守られている遠き空から
福山市 藤井光子
笑みながら二つに割った餡パンの大きな方をくれた母さん
鴻巣市 三浦忠裕
「ばあちゃん死んだらあかん」言ひくれし汝は婆の背丈を越える
高槻市 石田たまの
噛めるまで肝油の玉は軟化せり桜満開 冬眠明けだ
東村山市 加藤八重子
スーパーの足型マークに整然と並びてレジに辿り着きたり
市川市 小松富子
施設から入退院をする妻のほほえむ姿胸にしみ入る
石川県 岩城康徳
愛を絵に描くとすればキャンバス白地にわれはただ白を塗る
高槻市 濱辺幸子
教会に明るい靴の並びたる月に一度の「やまっこ食堂」
熊野市 福山久美子
天理図書館に魅せられて司書となりドン・キホーテと呼ばれ去り行く
尼崎市 藤井千年
一輪の花の蜜はいかほどか小さき蜂の働き見つむ
名古屋市 伊藤紘美
病むわれに青菜をきざむ夫の背の丸きを見れば心震えり
宇部市 天野敬子
鉢植えの梅にも遅き蕾つく 木も老いたれば歩みゆっくり
名古屋市 若月芙美子
真夜中にねずみに頭突かれた何か大事な用だったのか
宇佐市 三好秋美
十年間ペダル踏みたる桜舞うパートへの道納めてきたり
ふじみ野市 酒井笑子
選者詠
ロシア、ウクライナへ侵略する
映像を見るたびすさみ鳴りやまぬ
黄砂ふりくる身の奥の鈴
【評】
福島さん
カルテの横に書かれたこのお歌が辞世の一首に。時報歌壇にながく投稿してくださいました。
藤井さん
見守っておられるのは春のように温かい亡きご主人でしょうか。今回も全国から心のこもったお歌をたくさん頂きました。ご挨拶しながら皆様のお歌を拝読しております。
次回は、7月末までの到着分から選歌。投稿は短歌3首まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
〒632‐8686 天理郵便局私書箱30号
「時報歌壇」係
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