おやのことば・おやのこころ(2022年6月29日号)
風が変わるから、火が止まりますのや。
『稿本天理教教祖伝逸話篇』108「登る道は幾筋も」
6月に入ってしばらく、九州北部では梅雨入り前とは思えないほど暑い日が続きました。車に乗り込み、エアコンのスイッチを入れようとしましたが、ふと思い直して窓を大きめに開けて走りだすと、外から心地良い風が入ってきました。
毎年この時季になると、自教会にまつわる、あるエピソードを思い起こします。昭和20年、夏の終戦を前にした6月、福岡市内で大規模な空襲があり、教会周辺にも焼夷弾が雨のように降って、一帯は火の海に包まれました。教会に住む人々が懸命にお願いづとめを勤めるなか、神殿の軒先まで火の手が迫ったものの、にわかに風向きが変わり、すんでのところで類焼を免れた――というものです。戦火をくぐり抜けた神殿建物は、普請から90年を経て、いまなお健在です。
あらゆる災難は、いつ何時、どんな形で私たちの身に迫ってくるか分かりません。先輩方が神様にもたれて通りきる心を定め、その心をお受け取りいただくことで、大難を小難、小難を無難にお連れ通りいただいたように、後に続く私たちも、難渋の中こそ誠の心を忘れず、危険をあおる風の向きを変えていただけるような信仰信念を培いたいと思います。
梅雨が明けるころには、はや年の後半に突入します。年始に定めた目標を胸に刻み直し、親神様から追い風を頂けるような歩みを期して、夏本番に臨みましょう。
(榊)