地震に続き豪雨に見舞われた石川・輪島市の住民に寄り添って – リポート 災救隊第1次隊
2024・10/16号を見る
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民家の復旧に力を尽くす
既報の通り、災害救援ひのきしん隊(=災救隊、冨松基成本部長)本部隊は2日、豪雨による甚大な水害が発生した石川県輪島市へ出動。第1次隊として本部隊と共に新潟教区隊(吉澤清人隊長)、岐阜教区隊(中島悟隊長)が現地へ赴き、被災民家の“災害ごみ”の搬出と運搬、屋内の泥出しに汗を流した。
石川県能登地方では元日、「令和6年能登半島地震」が発生。被害の大きい地域が能登半島の先端だったため、インフラなどの復旧が遅れた。
発生から9カ月が過ぎても地震被害の爪痕が残り、壊れた護岸が仮復旧の状態のまま、9月21日から22日にかけて豪雨となり、地域の28河川が氾濫。輪島と珠洲の両市を中心に、土砂崩れや床上・床下浸水などの甚大な被害に見舞われた。
なかでも輪島市では、市内の中心を流れる河原田川が氾濫し、橋の高さまで流木が積み重なった。市内に20カ所の避難所が開設され、計418人が避難。また、地震後に設営された仮設住宅団地のうち、5カ所で床上浸水の被害が出た。
住民の中には、仮設住宅からの避難を余儀なくされ、再び避難所に身を寄せることになる人も。先の見えない生活に、強い不安を感じる住民が少なくないという。
心をたすける使命を胸に
2日午後、宿営地である日本航空学園能登空港キャンパス(輪島市)に、本部隊をはじめ、新潟、岐阜の2教区隊から成る第1次隊の隊員が集合。結隊式に続いて、本部隊と教区隊の代表者による会議が持たれ、翌日からの作業に必要な機材や作業工程について詳細に確認した。
3日午前7時45分、新潟教区隊の隊員たちは、必要物資をトラックに積み込んだのち、宿営地を出発。市の中心部を抜けると、道路を挟んだ川の向こうに見える山は、土砂崩れで山肌がむき出しに。豪雨被害の甚大さがうかがえる。
現場の一つ、同市河井町の被災住宅の前は、元日の地震の影響で崩れた屋根が放置されたままになっていた。その屋根の上に、今回の水害によって使えなくなった家財道具などの“災害ごみ”が積み上げられている。同市によると、災害ごみの量があまりに多いため、委託業者の回収作業が追いつかない状況が現在も続いているという。
到着した隊員たちは、時折、強い雨が降るなか、木材や金属、電化製品などを分別したうえで次々とダンプに積み込んでいく。また、要望のあった近隣の民家からタンスやソファ、家電などを搬出。これらを、仮置き場となっている輪島キリコ会館まで運んだ。
災害ごみの運搬を依頼した住民の一人、立野陽二さん(73歳)は「今回の大雨では、ブロック塀を越えて庭のほうから水が流れ込んできたかと思うと、あっという間に自宅の1階部分が水に浸かった。私も妻も高齢のため、災害ごみを仮置き場まで持っていけなかったので、こうしてきれいに片づけていただき、胸につかえていたものが取れたように思えた。本当にありがたい」と安堵の表情を見せる。
吉澤隊長(50歳・新津分教会長)は「現場には大小さまざまな問題を抱える方がおられる。作業の優先順位をつけるよりも、とにかく目の前のニーズを一つひとつこなすことで、一人でも多くの被災者の悩みごとを減らし、心のたすかりにつなぐことが使命だと思い、救援活動に当たっている」と語る。
住民が前を向けるように
3日午後、岐阜教区隊の隊員たちは同市小伊勢町の被災民家へ。家主の篠原今日子さん(41歳)によると、この地域も大雨の影響で一帯が冠水し、室内の鴨居の高さまで水に浸かったという。
「輪島塗の蒔絵師として働いているが、仕事道具が水に浸かり使えなくなってしまった。水害の発生当初は現実感がなかった」と肩を落とす。
隊員たちは、篠原さんの話に耳を傾けたうえで、使えなくなったタンスや家電、食料などを搬出。その後、スコップを使って屋内の泥を土嚢に詰めて運び出していく。屋外ではだんだんと雨脚が強まるなか、カッパを身に着けた隊員たちは3トンダンプとトラックに災害ごみを積み込み、仮置き場へ移動させた。
篠原さんは「地震で半壊した家をなんとか修理して住もうと考えていたが、今回の豪雨で、この家に住むのは、もう難しいかもしれないと思っていた。そんななか、こうして何から何まで片づけていただき、本当に助かった」と謝辞を述べた。
災救隊に出動を要請した輪島市社会福祉協議会の田中昭二・事務局長は「地震発生から9カ月が経ち、ボランティアセンターを週末型に切り替え、縮小していこうと考えていた矢先に豪雨災害が発生し、われわれも住民の方々も『また振り出しか』と途方に暮れた。そうした中で、災救隊の皆さんが被災民家の災害ごみを搬出してくださり、大変助かっている。災救隊の皆さんとは、地震のときからつながりがあり、統制が取れているので信頼している。これからも被災された方が前を向き、また頑張ってみようと思えるように、活動を続けてもらえるとありがたい」と話した。
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なお、第1次隊は2日から5日にかけて延べ69人が出動。約102トンの災害ごみや泥を運んだほか、7軒の民家で家財道具などを搬出した。
また、5日から8日までの第2次隊として富山教区隊(中島正治隊長)と滋賀教区隊(藪田廣信隊長)が輪島市へ。8日からは福井、愛知の両教区隊から成る第3次隊が出動している。
(9日記)
文=高田悠希
写真=嶋﨑 良
災救隊第1次隊の出動の様子を右記からご覧になれます。