時報歌壇(2024年11月27日号)- 植田珠實選
2024・11/27号を見る
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曾孫のつぶらなひとみよ笑まふ頬 われの腕に畏れつつ抱く
高槻市 石田たまの
北海道、増毛の漁師の五男坊 海愛しつつ埼玉で逝く
所沢市 岡田陽一
一度だけ頼みしおせちの広告が酷暑のなかを早々と来る
福山市 藤井光子
秋風の野面に立てば穂のにほひ豊けき心持てと言ふよに
八尾市 伏田和子
目を閉じて浮かびくるのは母のこと もっと言う事聞けば良かった
宇佐市 三好秋美
眉寄せて文句があれば談じ合い対いてまたもえくぼに負ける
静岡市 松田定治
会える日に一番きれいにみえるよう指折り数えて今日も髪梳く
京都市 寺澤幸子
大根の味噌汁すごく美味しい、かくし味なあに、と八歳は聞く
川越市 酒井笑子
風呂場より聞こえる息子の独りごと明日の仕事の段取りかしら
熊野市 福山久美子
ひたぶるに七つ釦にあくがれし少年老いて反戦をいふ
呉市 月原光政
路側帯の闌けし茅花の銀の波としばし併走すぢばへ向ひて
東村山市 加藤八重子
真夏日に公園体操出来なくて命を削り急に秋風
川崎市 木村道治
頂きし心づくしの栗ごはんひとりで食べる母逝きし秋
横浜市 及川秀代
無花果のいと美味しくて夫と食む想い出あまた遠きふる里
町田市 田林美智子
うちの猫会話成り立つピクピクと尻尾で返事じっと顔見て
日立市 高岡とみえ
選者詠
彗星はいづこをいくや交叉する
腕の間を動悸がぬける
【評】
石田さん――命への賛歌です。みどりごを抱くとき、畏れのような厳かな心に。
岡田さん――命はめぐります。息子さまへの惜しみない想いのこもった挽歌を詠われました。
藤井さん――この冬の暖かさの中でも正月は来るのですね。
次回は、12月2日までの到着分から選歌。投稿は新年に関する短歌3首まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
〒632‐8686 天理郵便局私書箱30号「時報歌壇」係
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