時報俳壇(2024年11月27日号)– ふじもとよしこ選
2024・11/27号を見る
【AI音声対象記事】
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虫の音に拍子木取られ夕つとめ
堺市 加藤恵秋
過疎の田のただ一枚の豊の秋
さいたま市 斉藤博之
星月夜棋士は一億三手読む
愛媛県 中山富貴
踊りの輪ゆがみいつしか丸くなり
横浜市 番家達也
悔い少しあるも感謝の秋大祭
豊川市 菊地美智代
初秋の風こそ清し礼拝場
近江八幡市 若林白扇
穭穂を生けし趣床の間に
観音寺市 川上隆子
名月や雨戸を引けば琴の音
天理市 北をさむ
秋の空路傍講演響く辻
二戸市 高屋敷節子
還暦の吾子と一献温め酒
札幌市 田森つとむ
修養科千期迎える秋のぢば
高崎市 正田久美代
遠来の教友をもてなす栗ご飯
尼崎市 藤井千年
よんなかの稲穂の向かう法隆寺
旭川市 藤崎 実
笛太鼓紅葉もある町に住む
広島市 大村佳光
今年酒盛り切り啜る恵比寿顔
和歌山市 西澤喜久治
多摩川の遠き富士見て菊の宿
川崎市 木倉井鷹子
迷い来てたどり着きたる萩の道
吹田市 楓 芳雄
教服の襟元なでる秋の風
今治市 仙波絹子
大祭や心澄むぢば空澄めり
東京都 大矢典子
法師蟬燃やす命の大合唱
横浜市 及川秀代
吾子の手の銀杏紅葉にまぎれをり
北九州市 岩谷典子
夫と帰る秋大祭へ杖用意
町田市 鯉渕洋子
秋寒や地震の後の豪雨かな
東京都 坂田鏡介
虫時雨余分な口ははさまずに
飯田市 水野千佐子
大風の荒れたる庭の秋明菊
佐賀県 武市艶子
コーナー駆く遠心力や運動会
大阪市 上田禮子
菊の窓開けて神職待ちにけり
津山市 工藤圭志
選者詠
新米の筆の太文字おにぎり屋
【評】
加藤さん――戸外ではいろいろな虫の音。つい気を取られ、拍子木のリズムが乱れてしまった作者です。
斉藤さん――過疎化した山里に残る一枚の田。いまも大切に先祖の田を守り、稔りの秋を迎えた感動の一句です。
中山さん――満天の星空と盤上を巡る無数の攻守。宇宙の「星」と人間界の棋士の「手」の取り合わせが絶妙です。
次回は、12月2日までの到着分から選句。投稿は新年に関する俳句3句まで。お名前(ふりがな)、電話番号、住所を付記のうえ、下記までお送りください。
〒632‐8686 天理郵便局私書箱30号「時報俳壇」係
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