創部初 明治神宮大会ベスト4 – 天理大学野球部
2024・12/11号を見る
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天理大学野球部は先ごろ、東京都の明治神宮野球場で行われた第55回「明治神宮野球大会」大学の部に2年連続3回目の出場。初戦を勝ち上がり、同大会初勝利を挙げると、準決勝で春の「全日本大学野球選手権大会」を制した青山学院大学(東都大学野球連盟代表)と対戦した。天理大学は大学選手権でコールド負けを喫した強豪を相手に互角に渡り合い、試合はタイブレーク制の延長戦にもつれ込む。延長十回裏、惜しくもサヨナラ負けを喫したものの、創部初のベスト4入りを果たした。
昭和21年、天理大学の前身である天理語学専門学校の野球部として創設。30年、「阪神大学野球連盟」に加入し、53年にリーグ初優勝を飾る。59年秋季には当時の新記録となる6季連続優勝を達成。平成9年、大学選手権に初出場、8強入りした。
その後、白川グラウンドに専用の野球場が整備されたほか、寮も開設されるなど練習環境が整えられた。
一方、20年の春季リーグで初の2部降格を経験。同部では元プロ野球選手で、天理高校野球部OBの中村良二氏(宮ノ陣分教会ようぼく)を監督に迎え、チームの立て直しを図った。
中村氏はプロで学んだ経験をもとに選手たちを指導。成果はすぐに表れ、翌年の春季リーグで1部昇格。着実に力を付けていったチームは、25年春季リーグで16季ぶりの優勝に返り咲く。
26年春、天理高校で夏の甲子園、奈良産業大学(当時)で大学選手権に出場した藤原忠理氏(鈴張分教会役員、現・天理高校野球部監督)が監督に就任。藤原氏は「自ら考え、自ら行動する」をテーマに掲げるとともに、「グラウンドに来て、練習の数を積むことが大切」など“チームスピリット”の改革に着手。選手たちの練習に取り組む意識の向上を図った。
27年、関西を拠点にする大学野球連盟の上位校で争う「大阪市長杯争奪関西地区大学野球選手権大会兼明治神宮野球大会関西地区代表決定戦」で初優勝。初めて「明治神宮野球大会」に出場した。
代表決定戦で2連覇3回目の神宮大会へ
令和3年からリーグ6連覇を達成するなか、今年1月、長年コーチとしてチームを支えた三幣寛志氏(44歳・網走大教会網三講講元)が新監督に就いた。「日本一を目指す」の大テーマ、「チームに協力できる人間」などの三つの小テーマのもと、チームの強化を続けた。
5月、春季リーグを制し、リーグタイ記録の7連覇達成。大学野球選手権に出場した。
大学野球選手権では、初戦と2回戦をコールド勝ち。準々決勝の帝京大学(首都大学野球連盟代表)にも3-0で勝利し、創部初のベスト4入りを決めた。
準決勝では、前年度覇者の青山学院大学と対戦。相手の強力打線を抑えられず、2-10で八回コールド負けを喫した。
この敗戦を糧に、新チームは再び「日本一」を目標に始動。春の結果を受け、「バッテリー中心に守り勝つ野球」をあらためて意識し、リベンジを誓って、猛練習を積んできた。
10月、秋季リーグでリーグ新記録となる8季連続優勝を成し遂げた。明治神宮大会への切符を懸けた代表決定戦では、決勝で大阪商業大学(関西六大学野球連盟代表)を3-2で破り、2連覇。関西地区の第1代表として、2年連続3回目の明治神宮大会出場を決めた。
各地のリーグ戦を勝ち抜いた強豪校が集う明治神宮大会。11月21日、天理大学は初戦で北海道二連盟代表の札幌大学と対戦した。
先発は、最速148キロのストレートと多彩な変化球が持ち味の的場吏玖投手(2年)。春季リーグでは最優秀選手賞を受賞したが、大学選手権では肘の故障でベンチを外れた。「大学選手権のマウンドに立てず悔しい思いをしたので、明治神宮で自分の力を証明したい」と。
また、先の代表決定戦でエースの長野健大投手(4年)が右肩を故障し、ベンチを外れたことから、「悔しい気持ちが分かるので、先輩の分までチームに貢献しよう」と、強い決意を胸にマウンドに立った。
試合は、的場投手が初回裏に先制点を許すも、満塁のピンチをしのいだ後は安定した投球で相手打線を抑えていく。
五回表、天理大学の攻撃。ノーアウト満塁のチャンスをつくると、四番・石飛智洋選手(4年)と五番・池田優斗選手(1年)の犠牲フライで勝ち越し。的場投手は七回1失点の好投を見せ、2-1で勝利。明治神宮大会で初勝利を挙げ、創部初となるベスト4入りを決めた。
三幣監督は「大学選手権を経験したので、大舞台で慌てる様子はなく、落ち着いたプレーをしていた」と話す。
大学王者相手にあと一歩及ばず
続く11月24日の準決勝では、春の大学選手権で大敗した青山学院大学と再戦。ここまで春秋リーグ戦、大学野球選手権で優勝し、大学4冠を射程に捉える強豪との一戦を前に、三幣監督は「普段通りに自分たちの野球をしよう。でも、勝つという強い思いだけは忘れないように」と選手たちに声をかけた。
天理大学は初戦に続き、的場投手がマウンドへ。序盤に制球を乱して4失点したものの、天理大学は四回表、的場投手が自身の適時打で1点を返し、2-4。続く井脇将誠選手(4年)がホームランを放ち、同点に追いつく。
その後、的場投手が四回から九回までを、わずか2安打に抑えるなど奮闘。4-4のまま延長に突入した。
延長戦はノーアウト一、二塁から始まるタイブレーク制で行われる。
十回表、天理大学が三者凡退に終わると、その裏、青山学院大学に1アウト満塁の場面で適時打を許し、4-5でサヨナラ負け。準決勝を勝ち上がった青山学院大学は決勝を快勝して大学4冠を達成。天理大学は大学王者にあと一歩及ばなかった。
杉下海生キャプテン(3年)は、「絶対に日本一になるという思いで臨んだ。準決勝は、大学選手権のときよりも悔いが残った。何がなんでも日本一になるという強い思いで、来年に向けて練習を再開したい」と悔しさをにじませた。
三幣監督は「選手たちは『青山学院ともう一度戦いたい』という気持ちが強く、そのために本気で努力した成果を証明した大会になったと思う。一方で、決してこの結果に満足していない。非常に悔しい思いをしたので、来年は今年以上の結果が出せるよう、もう一度しっかり練習に励みたい」と話している。