夏の甲子園へ 中村監督 選手の成長に涙 – 天理高野球部
天理高校野球部は7月28日、第104回「全国高校野球選手権大会」県予選決勝で生駒高校と対戦。初回から強力打線が爆発した天理高が21‐0で快勝し、5年ぶり29回目の甲子園出場を決めた。
昨秋の近畿大会では4強入り。ところが、第94回「選抜高校野球大会」では、星稜高校(石川)との初戦に4‐5で惜敗した。
さらに、「春季近畿地区高校野球大会」県予選でも、決勝で奈良大学附属高校を相手に3‐6で敗北。近畿大会出場を逃した。
雪辱を誓う同部は、全国大会に向けて守備力の強化を掲げ、試合中のさまざまなシーンを想定した実戦的な守備練習を徹底してきた。
県予選では、関西中央高校との初戦を9‐0、郡山高校との3回戦を10‐1、奈良北高校との準々決勝を9‐2で勝ち上がると、準決勝では、昨年の全国大会県予選準決勝と秋季近畿大会県予選準決勝で敗れた高田商業高校と対戦した。
二回表、1アウト満塁のチャンスで、1年生ながら春季近畿大会の県予選から全試合フル出場している松本大和選手がタイムリー3ベースヒットを放つなど、一挙4得点。その後は堅実な守備で相手に得点を許さず7‐0で勝利し、ここまで全試合コールド勝ちで決勝戦へコマを進めた。
決勝の相手は、準決勝で昨夏の甲子園準優勝校である智辯学園高校を破った生駒高。ところが決勝戦の前日、生駒高のメンバーの中に新型コロナウイルス感染疑いのある選手が複数人いることが分かり、急遽、ベンチメンバーを12人入れ替え、主力を欠く緊急事態に。
迎えた決勝当日。生駒高がベストメンバーで出場できないことを知った中村良二監督(54歳)は、試合前に選手を集め、「勝負事で手を抜くことは失礼だから、全力で戦うように」と声をかけた。
天理高は初回から打線を爆発させ、次々と得点していく。投手陣も好投を続け、堅実な守備で得点を許さない。
最終回2アウト。タイムを取った天理高の選手たちがマウンドに集まると、戸井零士キャプテン(3年)が生駒高のチーム事情に配慮し、「試合後に喜ぶのはやめよう」とナインに呼びかけた。
そして、技巧派右腕のエース・南澤佑音投手(同)が最後の打者を落ち着いて打ち取り、生駒打線を2安打に抑えて21‐0の完封勝利。5年ぶり29回目の夏の甲子園出場を決めた。
ゲームセット直後、マウンドに集まることなく、すぐに整列した天理ナイン。選手の相手校への自発的な心づかいに、中村監督は目を潤ませながら「本当は喜びたかったと思うが、相手の事情を察して思いやれるように成長しているのがうれしい」と語った。
また、5年ぶりの甲子園出場を決めたことについて「選手一人ひとりが、自分たちが頑張って練習してきたことを発揮した結果だと思う。甲子園に向けて、さらに打撃面の調整を行い、今回戦った生駒高校の分まで、何がなんでも勝ち上がりたい」と語った。
戸井キャプテンは「決勝戦には、皆でつないで点を取ることを意識して全力で臨んだ。甲子園という、夢の舞台でプレーできる喜びを胸に、日本一を目指して精いっぱい戦いたい」と意気込んだ。
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なお、第104回「全国高校野球選手権大会」は8月6日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。天理高の初戦は大会3日目、山梨学院高校と対戦する。
(8月3日記)
県予選決勝戦での天理高の活躍をご覧いただけます。