「人とのつながり」を考える – 視点
少し前になるが、「おひとりさま」という言葉が流行し、一人で気楽に生きることが注目を集めた。しかし一方で、孤立・孤独問題が現実にある。孤立・孤独ということは人間関係の相手、つまり「人とのつながり」がなくなるということだ。
その背景を考えると、日本の場合、これまで人とのつながりの中心は家庭と職場にあった。かつては「皆婚社会」であり、しかも3世代同居の大家族が多かった。いまは親と同居する子供が減り、離婚の増加や未婚化が進み、1世帯当たりの人数も減少して、高齢者の一人暮らしが増えている。
また、これまでは職場が人間関係づくりの中心であったが、日本型の雇用システムである終身雇用制が変化し、いまや労働者の7割、正社員の5割強に退職経験があるとされ、以前のような職場の人間関係は希薄になっている。家庭と職場でつくる「人とのつながり」は、もはや当たり前ではなくなったようだ。
しかし人とのつながりは、いつの時代も人にとって欠かせないものである。昨今「リレーションシップ」という言葉を耳にする。元来は「関係」「絆」「信頼関係」「付き合い」「家族関係」といった意味だが、企業マーケティングや個人の生活面において、人とのつながりの重要性を見直す動きが出てきている。たとえば、リクルートワークス研究所は、人とのつながりがもたらすものとして「精神的な支えや困った時のサポート」「一緒にいるだけで感じられる喜びや楽しみ」などを挙げ、職場や家庭以外でも多様な人間関係(リレーション)を増やすことが人生の質を高めることにつながると指摘する。
翻って、教会における人とのつながりを考えてみる。教会には、さまざまな人とのつながりがある。代々にわたってつながるようぼくもいれば、にをいがけや諸活動を通じてのつながりもある。最近は、こども食堂など地域の拠り所としてのつながりも増えてきた。
やはり“たすけの道場”たる教会では、人との接点におたすけがあることが望ましい。孤立・孤独を抱える人、一人で悩み苦しむ人にとっても、世界一れつきょうだいとして、人と人をつなぐ場所としての教会の働きに期待するところは大きいだろう。
(加藤)