おやのことば・おやのこころ(2022年9月21日号)
2022年9月21日
おやのことば・おやのこころ 人の事やない、皆めん/\の事やで。めん/\が痛み悩みと思えば、放って置く事は出来ようまい。
「おさしづ」明治29年5月21日
進行性の目の難病で40代に視力を失った和歌山市職員の男性Yさんは、休職して訓練施設で白杖の使い方などを学び復職。最初は家族に付き添ってもらっていましたが、やがて一人でバス通勤をするようになりました。
バスの乗り口を探すにも苦労しました。一人で通勤を始めて1年が経った朝、停留所で待っていると、「バスが来ましたよ」と少女の声がします。腰の辺りには、小さな手の感覚。女の子がそっと腰を押しながら、バスの入り口まで案内してくれます。「乗り口は右です。階段があります」。少女はそう言い、座席に案内してくれました。同じバスで通学する小学校の児童でした。降りる停留所も同じで、それ以来、名前も知らない女子児童は毎日助けてくれました。
しかし月日は流れ、女の子は小学校を卒業。「また一人で通勤か」。そう思っていると、声が聞こえます。「バスが来ました」。背中に、再び小さな手の温もりを感じます。Yさんと女の子の登校を見ていた、下級生の女の子でした。見よう見まねでサポートしてくれたのです。子供たちが自ら始めた“小さい手のリレー”は、Yさんが今年の春に定年を迎えるまで10年以上も引き継がれてきました。
最初の女子児童は「お母さんに『困っている人を助けなさい』と言われていたからやりました」と話します。やはり、お母さんの言葉は大きいですね。
(橋本)