人のつながりと「雑談」効果 – 視点
丸3年続く新型コロナウイルス禍は、人と人との関係を大きく変えようとしている。なかでも感染防止対策によって、会話の形が著しく影響を受けた。たとえば、職場や学校、家庭で気軽に交わされていた「雑談」の機会が極端に少なくなった。確かに2メートルの距離を取り、マスク越しでは会話は弾まない。
実は、この一見ムダとも思われる雑談には多大な効果がある。特に初対面の相手とは、雑談によって距離感が縮まり、余計な警戒心を抱かなくて済むようになる。また、会議やミーティングでは、上役の気さくな雑談によって全体の緊張感が解け、チームワークが向上することもあるだろう。
さらに、予期せぬアイデアが生まれる効用もある。何げない話から気づきやヒントを得、問題解決の糸口が見つかることは誰しも経験しているだろう。またジョークを含む雑談自体、ストレス発散になるという。会話のキャッチボールによって脳内ホルモンのドーパミンが増え、それがやる気の元になるのだ。
そもそも雑談とは何か。話す目的があり、伝達する要件が明確な会話とは全く違うらしい。たとえば「こんにちは」で終わってしまうあいさつに、「こんにちは、今日は涼しいですね」と言葉を重ねる。すると「そうだね。やっと秋めいてきたね」と続く。雑談する両者にとって、暑い涼しいはどうでもいい。意味を持たないムダ話であるが、上手に使えば、人とつながるうえでムダにはならない。
また、雑談に結論はいらない。相手と意見が違っても、即座に反論するのではなく、まずは首肯して共感の思いを伝える。適当なところで話題が変われば、今度はこちらの話を聞いてくれる。いま、ビジネスシーンでも雑談効果への関心が高まり、雑談のスキルを磨くトレーニングも行われているという。
社会で一目置かれ、好まれるのは、やはり人望ある人、言い換えれば「なるほどの人」に近いイメージだろう。それが信頼感につながる。
たかが雑談、されど雑談。その人の発する陽気な雰囲気が、人と人とをつなぐことは間違いない。
(安藤)