メタバースという新天地 – 視点
牡丹の花の季節に、教祖が差し出された片袖に顔をつけると、見渡す限り一面の綺麗な牡丹の花盛りを見せられた、という逸話がある(『稿本天理教教祖伝逸話篇』76「牡丹の花盛り」)。これは教祖の自由自在のお働きを示された一例であるが、現代人がVRゴーグルを装着し、メタバースの世界に没入しているさまを想起させる。
メタバースとは、メタ(超)とユニバース(宇宙)の合成語であり、インターネット上に構築された世界である。それは限りなく現実を模した空間であったり、反対に、現実とは全く異なる空間であったりする。
前者の一つに、東京の渋谷を精巧に再現した「バーチャル渋谷」がある。そこで昨年催されたバーチャルのハロウィーンイベントには、世界中から55万人が参加したという。
後者は登録者数3.5億人を擁する「フォートナイト」に代表されるゲームだ。一昨年には、著名な音楽アーティストによるコンサートがそのゲーム空間内で開かれて話題となった。
いずれにせよ、現実ではない仮想空間でユーザー同士が体験を共有する世界が形成されつつある。それは、身体的制約も少なく、容易に国境を越え、多種多様な人が集える空間でもある。そこでは物販はもとより、これまでに無かった新たなサービスも次々と生まれている。巨大IT企業フェイスブックが社名を「メタ」と変更し、この分野に本格参入したこともあり、現実世界とメタバースを往来する人は今後ますます増えるだろう。
かつて中山正善・二代真柱様は、あらきとうりようとは、荒地に入って、にをいがけをさせていただくのがその理であり、その新天地は地球上にとどまらず、いずれは月の世界にまで及ぶのであり、「月の世界へ飛び込む元気と用意がありますか」と、青年会員を叱咤激励された(「天理教青年会第35回総会に於けるお話」)。
月面布教はいまだ夢物語かもしれないが、近い将来、メタバースという新たな世界へ踏み出すあらきとうりようがきっと現れるだろう。それがどのような形をとるのかは分からないが、新天地の開拓を想像するだけでワクワクしないだろうか。
(三濱)