命に関わる大節の先に – 道を楽しむ3
長男が重度の熱中症になったのは7年前の夏だった。岩手県でも37度を超える猛暑日、高校の剣道の部活動中に倒れたのだ。市内の総合病院へ運ばれるが処置できぬほどの重体。すぐに高度救命救急センターへ搬送された。極めて危険な状態がしばらく続いたが、辛うじて一命を取り留めた。
学校側の過失として、女性の学校長A先生が丁重に陳謝に来られた。それに対し、私は「私たちが信仰する天理教では、成ってくるのが天の理と教えられます。このたびの出来事は、日々の親の通り方や心づかいが息子に現れたことであり、学校だけの責任ではありません。私にとって“さんげ”でもあります」と伝えた。A先生は安堵され、それ以来、深いお付き合いが始まった。
長男が高校3年の秋、天理大学の伝道者選抜を受験することになった。小論文の試験があることから、元々は国語教師だったA先生が、自ら指導に当たってくださることに。受験対策として過去の試験問題が必要となり、5年分を取り寄せたところ、たとえば「陽気ぐらしとは何か。天理教の教義をもとに詳しく説明したうえで、この教えの意義について自分の考えを述べなさい」などの過去問があった。さしものA先生も困り果てた。私なりに解答例を作り、あとは小論文に適した指導をお願いした。
数日後、それまで「中田さん」と呼んでいたA先生から、「中田先生」と呼ばれた。校長先生に先生と呼ばれるのは、なんとも面映ゆかったが、天理教の教えに大きな感銘を受けたことの表れであり、特に「陽気ぐらし」の教えは、A先生の心の琴線に触れたようだった。
翌月、おかげで長男は天理大学に合格した。発表の日、A先生から電話が入る。「実は私、夕べ天理教のご本部に参拝に行ってきたんですよ」と。数日前から京都に出張で来ていたA先生は、仕事の後、電車を乗り継いで天理へ。駅からタクシーで神殿に駆けつけたとのこと。境内掛に参拝の仕方を教えてもらい、長男の合格をお願いしてくださったのだ。合格の報告以上に、A先生の心が嬉しくて、感激のあまり電話口で涙した。
長男が熱中症で倒れて2年後の出来事。命に関わる大節の先に、親神様はこんな有り難い姿をお見せくださった。A先生、今度は長男がおぢばを案内させていただきます。
中田祥浩 花巻分教会長