目の前のご守護を見つめる – 視点
国内最大手の信用調査会社である帝国データバンクが、新型コロナウイルス関連倒産数を発表している。11月29日午後4時現在、全国で4,577件が判明しているという。発生累計件数のグラフを見ると、2020年2月から今年11月までに、驚くほどの右肩上がりの直線になっている。業種別で最も多いのは飲食店だ。いまも苦しいやりくりを強いられていることが分かる。関係者のご心痛を慮りたい。
2年前、飲食店を営む60代のご夫婦と話した。自治体から感染防止対策として営業自粛を強く要請され、アルコールを提供できない、午後6時に閉店しなければいけないなどの難しい状況が続いたが、筆者がご夫婦と話したのは、自粛要請が緩和され、午後10時以降も店を開けられるようになったころだった。
「お客さんは戻ってきましたか?」と尋ねると、「まだ全然」との答え。「客足が戻らないのは大変ですね」と言うと、ご主人は「以前と比べるとマシだよ。4月は全然だったから。無いものねだりをして、ストレスを溜めてもいいことはない。それよりも、早い時間に常連さんが来てくれるようになったから、それがうれしい」と元気そうな声で話してくださった。その返答を聞いて、先ごろ発布された「諭達第四号」にも引用されている「水を飲めば水の味がする」のお話が胸に浮かんだ。
「お母さん、もう、お米はありません」と話すこかん様に、教祖は「世界には、枕もとに食物を山ほど積んでも、食べるに食べられず、水も喉を越さんと言うて苦しんでいる人もある。そのことを思えば、わしらは結構や、水を飲めば水の味がする。親神様が結構にお与え下されてある」と諭され、励まされたと『稿本天理教教祖伝』にある。
「水を飲めば水の味がする」は、いま目の前に頂戴している親神様のご守護を見つめる大切さを教えてくださっていると思う。陽気ぐらしにつながる重要な視点だ。いま悩みを抱えている人の心に寄り添いつつ、この教えを伝えていきたい。
(松村登)