おつとめに縁ある月 – 視点
5月に入り、緑したたる頃合いとなった。この時期は新茶の季節であり、お茶農家にとって、一年に一度訪れる特別な旬でもある。
「夏も近づく八十八夜」と歌われるように、お茶摘みは、2月の立春から数えて88日目の5月2日前後に行われるという。
「おふでさき」には、お茶摘みにちなんだ次のようなお歌がある。
ちやつんであとかりとりてしもたなら
おふでさき 二号3
あといでるのハよふきづとめや
茶の葉を摘み、あとを刈り揃えてしまったら、それからは、いよいよ”よふきづとめ”に取りかかる。
つまり、人間のほうの農事の忙しさがひと段落したら、その後は、親神様が「よふきづとめ」の段取りにかかる。茶葉の収穫の歓びの後にくるよふきづとめの喜びが歌われている。
このお歌が収められた第二号の表紙には「明治弐巳年三月」とある。明治2年3月は、陽暦では4月12日から5月11日までの間に当たる。『註釈』によると、庄屋敷村付近での茶摘みは大体九十八夜頃(5月12日頃)とあるので、ちょうど、この辺りで茶摘みが始まる時期に筆を執られたお歌であろう。
それでは、茶の葉を摘んで、あとを刈り揃えてというのはいつごろのことか。
地域によって違いはあるが、一番茶の収穫後、約2カ月で二番茶の収穫が始まるという。この辺りで二番茶の収穫は、おおむね6月中旬から7月上旬にかけて。陰暦でいう5月頃を指すのであろうか。
実際、明治2年に限らず、陰暦5月の史実を『稿本天理教教祖伝』にたずねると、「おつとめ」に関して、いくつかの出来事があることに気づく。
明治7年陰暦5月5日、前川家にかぐら面を受け取りに赴かれ、明治8年陰暦5月26日には、かんろだいのぢば定めが行われている。おつとめが勤められるよう、その完成に向かって、勇んで段取りを進められる教祖のお姿が目に浮かぶ。
5月は陽暦陰暦ともに、おつとめに縁のある月だと思う。この道の先頭に立たれる教祖のお姿をしっかりと胸に治め、世の治まりを願って、勇んで陽気づとめに取りかかりたい。
(昭)