時報俳壇 – ふじもとよしこ選(2021年5月30日号)
万歩計の0に春風日本橋
横浜市 番家 達也
合格子へ別席を説く神の前
大津市 平井 紀夫
風光る浜街道の渚形
明石市 石田 史枝
飛花落花園児の列を解き放つ
横浜市 中尾 砂江
時満ちて霏霏たる桜やかた前
天理市 北 をさむ
借りものと気付く春光この命
橿原市 東 博
出直しって再出発よ花の散る
いなべ市 筒井みつ江
桜蘂降る古池や寺の跡
天理市 中山 富貴
春愁のテープに残る夫の声
和歌山市 荒井 佳世子
はるかなる宇宙船より春便り
東京都 坂田 鏡介
参拝の深き一礼合格子
飯田市 本島 美紀
昇殿の参拝かなふぢばの春
柳井市 冨山 栄子
花影の景色みかぐら歌流る
津山市 工藤 圭志
平成の三四郎逝く花の中
川崎市 木倉井 鷹子
海鳴りの途絶え流氷接岸す
札幌市 田森 つとむ
谷筋の苗代田にも水入りぬ
鳥取県 野間田 芳恵
里山の暫し賑わふ蕨狩り
観音寺市 川上 隆子
早春の命あふれる琵琶の湖
吹田市 楓 芳雄
春の夜の抽斗をでる一筆箋
東京都 吉田 柳哲
行く春のしんがり地域ひのきしん
豊川市 菊地 美智代
丘陵を虹かと見せてチューリップ
天理市 山田 実
グータッチして別れけり春しぐれ
埼玉県 金谷 武
花の下憂ひ迷ひも小さきこと
岡山市 後藤 由美子
閉店のチラシ飛ばして春一番
京都市 西 加代子
大吉と出たるみくじや亀鳴けり
東京都 野口 芳江
春光や思いを馳せる大和路に
貝塚市 守行 富士子
選者詠
文豪の部屋のロマンや外のさくら
【評】
番家さん
起点の日本橋から東海道を歩かれた作者は、0からの前進のみと精力的。余韻のある佳句です。
平井さん
おさづけの理を戴き、この道の真のようぼくとなるために運ぶ別席。新しい一歩を踏み出す旬に諭された作者です。格調ある句です。
石田さん
波が寄せては返す、刻々と変わる浜辺の景色。季語の「風光る」がピッタリです。
次回は、7月末までの到着分から選歌・選句。
投稿は短歌3首、または俳句3句まで。お名前(ふりがな)、電話番号を付記のうえ、左記まで。
〒632‐86868天理郵便局私書箱30号「時報歌壇」または「時報俳壇」係 Eメール=[email protected]