子供の心を育む夏に – 視点
ある民間研究所の調査によると、コロナ禍の夏休みに、親が大切にしたいと考えるのは「家族で一緒に過ごす時間」と「夏休みだからできる体験」という回答が多かった。具体的に子供にやらせてみたいこととしては、多くの親が「プール」「キャンプ」「海水浴」「川遊び」など、夏休みならではの非日常体験を挙げた。しかし、いまだ続く制限下では、こうした望みを叶えられる家庭は多くないのではないか。
教育カウンセラーの草分けである菅野純氏(早稲田大学人間科学学術院名誉教授)は、幼児期から学童期の間に育てるべき子供の心に“三つの土台”があるとしている。土台の最上段は「社会生活の技術」で、人と人とが関わり合って暮らすうえで役立つテクニック。そして、それを支える土台となるのが「心のエネルギー」だ。このエネルギーをチャージするためには、「①安心感 ②楽しい体験 ③認められる体験」の三つの要素が不可欠で、これらをバランスよく与えることで、勉強や物事に取り組む前向きな気持ちが芽生えてくる。これらは、冒頭に紹介したコロナ禍の夏休みにおける親の思いと合致している。
しかし菅野氏は、その下層にさらに重要な土台があると述べる。その土台は「〈人間のよさ〉体験」で、「人っていいな」という子供の実感が、他者への信頼感と自己肯定感を育むという。言い換えれば、子供が人から親切にしてもらったり、優しくしてもらったりした体験の積み重ねだ。この基礎がないと、思春期以降の人格形成に深刻な影響が表れることもあると注意を促している。
ある先人の幼少体験に、教祖が「ここは生れ里(ざとう)やよってになあ」と仰って、両手にこぼれるくらい金米糖の御供を下さり、そのときの嬉しさは忘れられないと伝えている。これに象徴されるように、教祖は、お屋敷を訪れる子供に分け隔てなく、お菓子を与えられるのが常であったと聞く。
この夏、こうした教祖のひながたを思いつつ、子供たちに接していきたい。
(諸井)