「満足型」集団を目指す – 人と関わる知恵
金山元春
天理大学教授・本部直属淀分教会淀高知布教所長
教育心理学者の河村茂雄博士は、子供による自治的活動によってルールが定着し、リレーション(情緒的なふれあいのある人間関係)が育まれている学級を「満足型」と呼んでいます。満足型では、子供の学習意欲が高く、学力の定着も良好です。また、仲間づくりや集団活動に対する意欲がとても高く、いじめや不登校が生じにくい学級でもあります。
満足型集団を育成するには、まず集団内にルールを定着させる必要があります。ルールと言うと個人の自由を奪うものだと思う人がいるかもしれませんが、ルールとはむしろ個人の自由を守るためのものです。私たちは異なる感じ方、考え方、価値観をもって共に暮らしています。一部の人だけではなく、すべての人の安心・安全を守るためには、共有されたルールが必要です。そうした枠の中で守られてこそ、私たちは自由な生活を謳歌できるのです。よって、集団のメンバーが自由に素直な気持ちを伝え合うことができる関係を築くためには、ルールの定着が前提条件となります。
集団のリーダーは、ルールの定着具合を見ながら、徐々にメンバーに「手綱」を預け、メンバーによる自治的活動を促していきます。その際、①相手の話を聴く ②仲間を認める ③自分の思いを語る――という流れで人間関係を育てていけば、集団のリレーションは徐々に深まっていくでしょう。リレーションが深まった集団では、外枠としてのルールがなくても、互いを配慮するマナーや心配りが見られるようになります(ルールの内在化)。そうすると、安心・安全の風土が一層広がり、その中で本音と本音の交流が促され、ますますリレーションが深まっていくという好循環が生じます。
こうした集団では、メンバー同士が切磋琢磨する相互作用が生じます。互いを認め合い、良いところは取り入れようとするので、一人ひとりの成長が促されます。また、課題が生じたときでも、メンバーが支え合うことで、それを乗り越えようとします。このように個人としても集団としても成長できるのが満足型集団です。これは子供だけでなく、大人も同様です。満足型集団を目指しましょう。