手間暇をかけて味わう喜び – 視点
近年、アナログレコードの人気が再燃している。
日本国内のレコードの生産額は、2010年には1億7千万円まで落ち込んだものの、20年には21億1千700万円まで持ち直し、この10年間で12倍に増えた。アメリカでは昨年、34年ぶりにレコードの売り上げがCDを上回った。
世界的ブーム再燃の背景には、長年レコードに親しんできた年配者はもとより、特に20代を中心とする若い世代に人気が広がっていることがあるとされる。
かつて音楽業界の主役だったレコードが、その座をCDに奪われて久しい。さらに時代が進んだ現代はCDが売れず、インターネットの音楽配信が主流となり、月1,000円ほどの定額制で、スマートフォンによる聴き放題のサービスが定着している。
一方、レコードは、CDと比べても価格帯が1.5倍高くなり、聴くためにはレコードプレーヤーも必要になる。では、なぜレコードが人気なのだろうか。
理由はいくつか挙げられるが、その中に「手間をかけて音楽を聴く体験が心地良い」という声があるという。指先の操作一つで簡単に音楽が聴けるデジタルの利便性とは真逆の体験が、若者にとって新鮮な魅力と映るようだ。
ICT(情報通信技術)を活用したサービスが普及し、安易に安価で欲しいものが手に入る世の中になっても、手間はかかるが、お手軽に味わえない体験に価値を見いだす人が少なくないようだ。
現代の生活は、さまざまな技術の発達に伴い、利便性が高まっている。私たちの信仰生活も、その恩恵を受けている。
だが、手間をかけ、じっくりと時間をかけなければ味わえない信仰の喜びが確かにある。手間や時間をかけるからこそ、その持続性も高まると思う。
教祖は「価を以て実を買うのやで」と仰せられた。真実の価を尽くすことの大切さを忘れずに、つくし・はこび、ひのきしんなど地道な実践をコツコツ積み重ね、味わい深い信仰の喜びを感じていきたいと思う。
(永尾)