天理時報2023年11月8日号8面
【世界宗教を生んだ聖なる地はいま – 手嶋龍一のグローバルアイ29】ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が誕生した中東の沙漠ではいま、悲惨な戦いが繰り広げられている。9・11同時多発テロに見舞われて以来、世界は最も深刻な危機のなかにあると云っていい。ユダヤの民は父祖の地を逐われて3千年、国家を持たないまま各地を彷徨ってきた。その苦難の旅は旧約聖書の「出エジプト記」に刻まれている。中世に入ってもユダヤの民は迫害を受け続け、先の大戦ではナチス・ドイツによって絶滅収容所に送られ幾多の人命が喪われた。ドイツだけでなく、かつて迫害に関わった多くの国々に深い贖罪の意識があったのだろう。国際社会はユダヤ民族に約束の地“パレスチナ”を与え、1948年にはイスラエル国家が誕生する。だが、パレスチナには先住のイスラム教徒が暮らしていた。周辺のアラブ諸国はイスラエル建国に抗ってイスラエルとの戦争が勃発する。中東での戦争は四次に及び、米国はじめ各国の仲介で和平交渉が繰り返された。だが、いまだにイスラエルとパレスチナの真の共存は実現せず、紛争は却って激化し、第5次中東戦争の瀬戸際にある。パレスチナ自治区ガザに実効支配するハマスは、絶望の果てにイスラエルへ奇襲を試みた。アラブの盟主サウジアラビアがイランと国交を結び、イスラエルとも外交関係を樹立する構えだったからだ。パレスチナはやがて見捨てられる――、ハマスは残虐な蜂起に駆り立てられていった。最強硬派のネタニヤフ政権は全面報復の構えを崩さず、憎悪と報復の連鎖がとまらない。カタールやエジプトは、戦闘の一時停止や人道援助は仲介できても、本格的な停戦交渉を担うことはできずにいる。翻ってニッポンは、中東に負の歴史的遺産がない。ガザの戦場に身を置いて医療活動を続けている日本の人々もいる。一方で、かつて杉原千畝という外交官が6千人のユダヤ難民を救い、その勇気ある行動はパレスチナの人々も認めている。世界有数の経済大国にしてG7の議長国であるニッポンは、いまこそ、こうした人道上の資産を活かして、停戦に向けた行動を起こすべきだろう。情勢は錯綜しているが、ニッポンには秘めた力があると信じたい。, 【全日本学生 団体・個人でV – 天理大学合気道部】天理大学合気道部は先ごろ、東大阪市の近畿大学記念会館別館で開催された「全日本学生合気道競技大会」に出場。女子乱取団体戦と同演武競技対武器で、それぞれ優勝した。団体戦は5年連続11回目、対武器は34年ぶりの栄冠に輝いた。対武器に出場したのは、大朋祥乃選手(4年=写真中央)と鬼塚日和選手(同=同右)のペア。大学から合気道を始めた両選手。コロナ禍で大会が開かれない中も、練習の際には「応用力を磨くため、基本を忠実に繰り返した」という大朋選手。一方の鬼塚選手は「やみくもに続けるだけでは形が崩れるため、こまめに監督に確認するなど、客観性を意識した」と振り返る。昨年の「関西学生合気道競技大会」で初めてペアを組んだ二人。同大会で準優勝すると、同年の「全日本学生」でも僅差で準優勝。今大会に向け、あらためて優勝を目標に掲げて研鑽を積んできた。また、5連覇が懸かる団体戦に向けても、全国大会で活躍したOB・OGの協力のもと、乱取り稽古を続けてきた。34年ぶりに優勝飾る大会は、三人一組による女子団体戦から行われた。メンバーは大朋、鬼塚の両選手に加えて、昨年の「全日本学生」乱取競技個人戦で優勝した有本結望選手(3年=同左)の3人。シード権を獲得した同部は準決勝で国士舘大学を相手に3-0のストレート勝ちを収める。決勝の相手は関西学院大学。まず、先鋒の鬼塚選手が得意の「前落とし」などでポイントを奪い、4-0で勝利。続く有本選手も白星を挙げると、大将の大朋選手は前半に「下段当て」などを決めて大量リードを奪い、16-0と圧勝。団体戦5連覇の快挙を達成した。また対武器では、予選を12組中1位で通過して、シード権を獲得。準決勝の成城大学戦を3-2の僅差で突破すると、奈良女子大学との決勝戦は、天理伝統の気迫のこもった演技が評価され、5-0で勝利。34年ぶりとなる優勝を飾った。このほか、女子乱取個人戦では有本選手が3位入賞した。大朋選手は「昨年、悔しい思いをしていたので、『絶対優勝する』と気合を入れて練習してきた。一緒にやってきた鬼塚選手と共に、最後の大会で優勝できてうれしい」と笑顔を見せた。鬼塚選手は「自分は合気道に向いていないと思うときもあったが、諦めずに続けてきて良かった。対武器では、なかなか優勝できずに悔しかったけれど、ペアの大朋選手と最高の形で終われることができて胸がいっぱい」と喜びを表した。