天理時報2023年3月29日号8面
【阪神リーグ5季連続Vへ – 天理大学野球部】天理大野球部は、春季リーグ戦を前にオープン戦を重ねて調整している(3月15日、白川グラウンドで)天理大学野球部は現在、4月初旬に開幕する「阪神大学野球春季リーグ戦」に向けて連日、オープン戦を重ねている。昨秋のリーグ戦で4季連続23回目の優勝を果たした同部。新チームは、「リーグ5連覇」と3年連続の「全日本大学野球選手権大会」出場を目標に掲げてスタートした。”守り勝つ野球”に磨き昨年のメンバーが多く残る今年のチーム。昨春のリーグ戦で「最優秀投手賞」に輝いた真城翔大投手(3年)は、コントロール重視の”打たせて取る”技巧派。一方、秋のリーグ戦で「最優秀選手賞」を獲得した藤居海斗投手(同)は、力強いストレートとキレのある変化球を武器に、相手打線を封じ込める本格派。この両エースを軸に、”守り勝つ野球”でリーグの頂点を目指す。野手陣では、1年時からクリーンアップを任されてきた近藤遼一選手(同)、長打力が魅力の吉田元輝選手(同)など好打者がそろう。リーグ戦に向け、守備練習はもとより、得点につなげるバッティングを意識し、さまざまな戦況に応じて、いかに得点を挙げていくかをイメージしながら打撃練習を繰り返してきた。2月には、四国で春季キャンプを実施した。キャンプ前半は「数をこなす」をテーマに掲げ、打撃陣は打ち込み、投手陣は投げ込みに専念した。後半はバットの芯に当てて飛距離を伸ばすことや、狙ったコースに投げ分けることなど、「確率を上げる」ことを念頭に練習を積んだ。2月24日からはオープン戦がスタート。中盤の3月15日には、白川グラウンドを会場に、昨年の「近畿学生野球連盟秋季リーグ戦」を制した大阪公立大学と対戦した。天理大学は立ち上がりからペースを掴めず、投手陣が打ち込まれて失点していく。5点ビハインドの天理大学は五回裏、下林源太選手(2年)の2点タイムリーヒットなどで一挙4得点を挙げて追い上げる。しかし逆転には至らず、4‐7で敗れた。以後、天理大は3月30日までに24戦をこなし、本番の春季リーグ戦に挑む。◇藤原忠理監督(57歳)は「春のリーグ戦では決して気負わず、無駄な失点を防ぎ、少ないチャンスをものにしていく我々の野球を心がけたい。一戦一戦を大事に戦い抜き、最後にリーグ5連覇という喜びを手にしたい」と話している。(3月22日記), 【第40話 ぼくたちはずっと一緒だった – ふたり】沖のほうからやって来た波が、小さな潮の泡をまき散らしながら波打ち際を進んでくる。そして途中で力尽きて、あきらめたように海に帰っていく。再び海面が盛り上がり、鈍色の波が「今度こそは」という感じで進んでくる。寄せては返す波の調べに心が静まるのは、人間の身体のどこかに、遠い海辺の記憶が残っているせいかもしれない。カンもハハも、海辺で癒やされていった。波が去ったあとの、帯状に広がった濡れた砂が、午後の日差しに淡く光っている。遠い街で暮らすさとしは、ときどきメールに添付した写真を送ってくる。そこには人のいない公園の遊具や、放置された自転車などが写っている。彼は写真を撮ることで自分を癒やそうとしているのかもしれない。送られた写真を、カンはプリントして、お菓子の空き箱のなかに大切にしまっておく。いつか写真に人や動物が登場すればいいなと思っている。会いにいってみようか。ふと、そんなことを思ったりもする。すっかり大人になったツツの面影が、いまも彼のなかに残っていた。それは冷たくて熱い不思議な感覚をもたらした。秋も終わりに近づいた日の朝、カンはいつものように波乗りに出かけた。外気と海水の温度差が激しいと、海面から水蒸気が昇る。朝焼けが霞んで見える。波はきれいに整えられたラインをつくり出している。彼は海と一つになって最適な波を待つ。この季節には台風もやって来ない。乾燥した風が吹き、澄み切った青空の下での波乗りが可能になる。だから休みの日には、多くのサーファーたちが海に繰り出す。さらに季節が進んで、午後の早い時間から波の斜面がキラキラ輝くようになると、もう冬の訪れが近い。こうして一年が過ぎていく。海から上がると、彼はボードを抱えて砂浜を歩いていった。店じまいをした海の家のまわりに、船底を上にしたボートが引き上げられている。風が当たらず、砂が動かないところには、ハマヒルガオやツルナなど、砂浜で花を咲かせる植物の群生が見られた。砂地を被う草花のなかに、小さな黒い塊がうずくまっていた。近づいぬいてみると、生まれて間もない仔犬だった。彼はサーフボードをそっと砂の上に置いて、仔犬のそばにしゃがみ込んだ。前から予感していた。帰ってくることはわかっていた。こうしてきみを見つける前から、ぼくたちはずっと一緒だった。「ピノ」声に出して呼びかけた。仔犬はわずかに首を上げて青年を見た。「おかえり」(終)